美しい月。殺生丸はの隣で、それを眺めていた。隣にいるは疲れてしまったのか、目を閉じてぐっすりと眠っている。


その様子は普通となんら変わらないのに、どうして…彼女だけが、見えないのだろうか。彼は神というものを決して信じてはいないが、もしいるのなら、ひどいものだと思った。

…彼女だけが、見えない。


それでも普通に生きていく。たくさんの不安を抱えながらも、普通に生きていく。…目が見えないことが普通。そんな生活をもし彼が強いられたら、耐えていけるだろうか?否、耐えられるはずがない。


あの時、の気配を近くに感じて助けにいったあの時、彼女はすでに死を覚悟していたに違いない。崖の下で、まったく動かず、目を閉じて。…そうだ、彼女には、あの崖を這い登る術はなかった。もしあそこで殺生丸が助けに行かなければ、彼女はあのままあそこで死んでいたのだ。


死を覚悟。いったいどんな気持ちなのだろうか。


には、考えさせられることばかりだ。