黒巫女の呪いを解くなら、巫女に頼むのが一番だ。そう考えた殺生丸は、不本意ではあるが、かごめの所に出かけていくことにした。だが、彼が直接頼むのは殺生丸の自尊心に反する。…だから、りんにこのことを吹き込んで、りんとの二人で、かごめの元へ行かせることにしたのだが…


「いやです」
「、」
「殺生丸様も来てくれないと、いやです!」


そうがわがままを言うので、結局殺生丸と邪見もついて行く事になってしまった。


邪見の案内で、犬夜叉が封印されていた時代樹の前まで来ると、すぐ近くに人間の村の気配があることに気づき、その方向へ歩き出す。犬夜叉のにおいがする、と思ったら、向こう側からやかましく走ってくる音が聞こえた。そして、かすかだが、犬夜叉、と叫ぶかごめの声も。


「…何しにきやがった、殺生丸!」


森の向こう側から飛び出してきた犬夜叉が、彼を見るなり言った。


「きさまになど用はない」
「んだと?だったらなんでこんな所きやがった!」
「お前と一緒に入る巫女に用がある」
「かごめに用だと?ふざけんな!」
「…犬夜叉!どうしたの?」


今犬夜叉が現れた所から出てきたのは、驚いた表情を浮かべたかごめだった。


「、殺生丸!」
「かごめ、下がってろ!こいつはお前をねらってきてんだ!」
「な、あたし?」
「ねらっている?その様な小娘を殺したところで、何の意味もない。用とはもっと別のことだ」
「なっ、失礼ね!」
「だー、うっせぇ!とにかくかごめに妙な事しやがったら…」
「あ、あの、話を聞いてください…!」


殺生丸のすぐ後ろから、が飛び出した。その事に、犬夜叉はもちろん、かごめまでも驚いて目を見開く。


「あの、あ、あなたは…」
「私は。…あの、どうしても、貴方に呪いを解いて欲しくて…」
「の、呪い?」
「けっ、そんな女連れてきたってだまされねぇぞ!散魂鉄…
「犬夜叉、おすわり!」
「ふぎゃ!」


かごめの華麗なおすわりが決まり、犬夜叉が地に伏せた瞬間にかごめが走り出した。のすぐ目の前に掛け出して、まじまじと眺める。


「…呪いって…そんなのかかってるように見えないけど…」
「私、目が見えないの。呪いのせいで」
「え!」
「黒巫女の呪いなの。だから、貴方に言えば解いて貰えるかもしれないって…殺生丸様が」
「殺生丸が?」


の言葉に、かごめはちら、と殺生丸を見やった。そして、意味深にふぅん?と笑って、それからの手を取る。


「わかったわ。じゃあ、こっちに来て。詳しい話は楓おばあちゃんの家でききましょう!」
「あ…うん!」


かごめに引っ張られて歩く。少し離れてからかごめが、殺生丸もはやく!りんちゃんもおいで!と声を掛けると、りんは喜んで走って行って、かごめとの間に割り込んで手をつないで歩いていく。殺生丸と邪見は、その様子に半ば呆気にとられながら、渋々歩いていく。未だ倒れている犬夜叉をぐっと殺生丸がふみつけ、次に邪見が通った瞬間ガバッと起き上がって、ぎりぎりと首を絞められていたが、殺生丸はそれを無視してさっさと歩いていった。