「貴方には、雪が似合うと思います」


ふわりと笑って声を奏でるに、殺生丸は僅かだが顔を顰める。

空から注ぐ小さく灯るような白は、殺生丸の銀の髪に被さって薄く光った。








「すごーい、雪だぁっ」


りんは弾ける様に言うと、タッと駆け出して両手を広げた。

天を仰ぐその仕草が微笑ましい。ふっと横を見れば邪見までも、りんさながらにはしゃいでいる。


「ねぇ邪見様、一緒に遊ぼう!」
「ふん、仕方ない。今日だけだぞ」


そんな事を言いながらも嬉しそうな邪見。はそんな彼にくすっと笑い、後ろに居るはずの殺生丸に目を向けた。

のリュックサックから勝手に敷物を出して座りこんでいる。

どうやらいつまでかは知らないが、ここで休憩を取る事にしたようだ。


「殺生丸様…隣、座っても良いですか?」


少々遠慮がちに聞いて彼と視線を合わせる。殺生丸は軽くを見据えると、座っている位置を真ん中から少し左よりにずらした。


「嫌だと言っても座るのだろう」
「はい」


満足そうに微笑んで、腰を下ろす。殺生丸はそんな彼女を恨む気持ちで見た。

白くなる風景の中で、映えて来るの肌や髪。

肩に少し雪を積もらせて、それでも嬉しそうに空を見上げている。

そんな彼女にふっと溜息を着く殺生丸。するとはそれに気付いたのだろう。彼の方を振り向いて、薄く笑って見せた。


「どうしました、殺生丸様?」
「…お前は、なぜそんなにも嬉しがるのかと思った…」
「なぜって…嬉しくないんですか?」


ん?とでも言いたそうに首を傾げる


「別に嬉しくはない」


殺生丸は軽くそう答えると、ふいっとから顔をそらした。はちいさく「そうですか」と漏らして、再び空を仰ぐ仕草をした。


「私、雪って貴方みたいだと思うんです」
「…私見たい、だと?」
「…貴方には、雪が似合うと思います」


優しげに笑みを浮かべ、彼を振り返る。殺生丸は顔を顰めると、それを隠すように天を見上げる。


「なぜ」
「なぜでしょうね」
「茶化すな」


呟いて、の肩の雪を払う殺生丸。はそれに微笑して、また言葉をつむぐ。


「ほら、こう言う所。
 冷たい振りして、優しい」


触れているその手にそっと自分の手を乗せて。ふんわりと微笑む

殺生丸はふんっと鼻をならして目を逸らすが、置かれたその手をぎゅっと握る。

はその事に頬を染め、握られた手を強く握り返した。


「くだらんな」
「そうですね」


くすくすと笑って、彼の肩に体重を預ければ、拒否をするでもなく、伝わってくる温かさ。


楽しそうに遊ぶ邪見とりんに手を振って、いつまでも降り止まぬ粉雪を眺めていた。








2004.11.29 monday From aki mikami.