幻想でもいいから、

あなたと雪を





清浄な泉。

はその前で足をとめた。するりと肌を撫でる感覚が気持ちよい。


「……この水」
「なんだ」
「ん…いや。すごく…きれいだなぁと思って……」


澄み切っている。殺生丸はの背後から泉をのぞきこんで、僅かだが目を細めた。感じたことのない感覚が、溢れてくる。


「…霊力、か」
「え……?」
「霊力が、溢れている…が、」


それだけではない、そう思う。
は泉の水をすくい、自らの顔をうつした。


「…きれいね」
「あぁ」
「ねぇ、夜にまた来てみない…?」
「夜に…?」
「夜に来たら、何かが変わっている気がするの」


そういって、は手の中の水を中宮にばらまいた。雫が宝石のように光り、を照らし出す。


「ね…?」


ふわりと笑う。殺生丸は勝手にしろと言って、りんたちが待っている方へと歩きだした。









◆ ◇









二人は夕方にみた泉に向けて歩いていた。は殺生丸の助言により、上にもう一枚着物をかけている。


「どうなってると思う?」
「なにがだ」
「泉」
「…何か変わっているというのか?」
「うん」
「……」


殺生丸は、のように考えていたわけではない。ただが夜に来たいと言ったから、ついて来ただけだった。


「知らぬ」
「えぇ…ひどい…。なんかなんでもいいからないの?」
「ない」
「本当にない?なんかこう、精霊がいるとか」
「随分と想像力が豊かだな」
「……今の言葉大分傷ついたんですけど…?」


は殺生丸の前に回り、むくれた顔をしてみせる。殺生丸は嘲笑を浮かべ、の肩を軽く押すと、泉の方へと視線を向けた。


「―――…!?」
「?」


なぜか、殺生丸が驚いたような表情を見せる。は軽く首を傾げるが、すぐにその意味がわかる。


「、雪!」


殺生丸の髪の毛にふわりとかかる雪。白く光る雪は、彼に降り注ぐことでまたさらにきれいにうつる。


「きれい……」
「……
「ん?」


目の前の殺生丸がを呼び、彼女の肩をつかんで振り返らせる。その瞬間、の目にうつったのは…


「―――…」


言葉をなくした。小さな泉に光がさし、そこに雪が降り注ぐ。ひらけた空は、ぽっかりとした月夜。


「月夜の…天気雪?」


幻想的。すべてのものがいつもと違う、特別なものに見えた。木の一本一本、光の一筋一筋、そして、隣にいる殺生丸。


「本当に…きれ、


きれいだねと、彼に問いかけようとした。だが、それ以上声を紡ぐことができない。―――の口は、彼によってふさがれていたから。

殺生丸の手が髪をすべり、舌をなめ、は彼にしがみつく。雪で冷えきっていた体には熱すぎるほどの二人の口づけは、甘く、とろけるような感覚。

ようやく唇が離れても、彼は頭への愛撫をやめなかった。


「殺生丸…」
「―――…思い出した」
「え?」
「はじめてあった、あの夜」


細められた目が、何かを語る。それがなにか、にはわからなかったが…それはとても心地良い感覚。


「私も…同じこと思い出した」


そう言って笑みを浮かべると、彼の頬に触れる。そうすれば愛おしむような手が、彼女の頬を滑って。

もう一度触れた唇は、雪のような温かさだった。





その後、邪見とりんの元へと帰ったと殺生丸は、雪などまったく降っていないことを告げられた。
精霊さんがくれた贈り物かもね、とが言うと、いつものようにくだらぬと返した殺生丸がいたそうな。









アトガキ

わけがわからないですね!ってかただいちゃついてるふたりが書きたかっただけなんです~。
月夜の天気雨の設定で書きましたけどー…まぁ微妙にしか関係してないのですっ飛ばしても大丈夫♪ですよ!

さて…この話をなんで書いたか…それはですね、今朝登校する時に、なんと天気雪が降っていたからです(三上は北海道札幌在住)。今は夜ですが、まだ雪は降ってますよ~(さむいなぁ…)。何かすっごいインスピレーションで、一瞬で出来上がりました!ただ昼間はそれを形にする時間がなく…(汗)
まぁこんなんで、殺生丸さまとのいちやいちゃを少しでも感じていただければ(笑)

それでは失礼します。









2006.03.13 monday From aki mikami.