すき



「健悟…?」


たまたま美術室の前を通り掛かったら、そう声をかけられてびっくりした。ドアから顔を出しているが、微笑んでいる。けれど、僕のほうはそれに対して、微笑み返す事が出来なかった。


「あぁ…
「どうしたの、健悟…?美術室に何かようだったの?」
「いや…そういうわけじゃないよ」
「なんだぁ…最近健悟遊びに来てくれないから、ちょっと期待してたのに」


僕なんかが行かなくても、今野先生がいるだろう。心で、そんな悪態をついてしまうのは、きっとあんな噂を聞いたからだ。僕とが付き合ってるって、噂。


「実はこれから職員室に行かなきゃ行けなくてね。よりたいのは山々なんだけど…」
「いいのよ、気にしないで。私の我が儘で、ひきとめちゃわるいものね」


寂しそうに笑う。…今野先生にいてもらえばいいじゃないか。言いかけて、やめた。それは、男として人間として、最低のひとことだ。


「ほんとにごめん。時間があったら、後で寄るよ」


できる限りの作り笑顔で言う。は僕の気持ちも知らないで、わかったと言って笑った。


その場を後にして、職員室で用事を済ませて…でもその間、頭の中はのことでいっぱいだった。


どうして今野先生と言う人がいながら、僕なんかを誘うんだろう。僕なんかと噂になったら、先生に誤解されるんじゃないのか。色々思考を巡らせてみるが、さっぱり落ち着かない。


どうしてのことを考え始めると、冷静でいられないんだろう。自分が馬鹿みたいに思えてくる。だって今までみたいに慎重な判断を下すことが出来なくなってるじゃないか。


赤沢の言葉を思い出す。


「そう思うってことは、多少は――――


僕が、をすき?どうしてそんなことがわかる?だって僕はそうは思わない。彼女のことが好きなら、きっともっと彼女に会いたくて堪らなくなるはずだ。だけど今僕は、逆に彼女に会いたくない。の顔をみたら叫びだしそうだ。


…そんなのは、好きっていえない。







「それって、もろ好きってことじゃん。さんのこと好きだったから、別の奴を好きなさんの顔見たくなかったんだろ?」
「その通りですよ、金田一君。自分の負けを認めるのが怖かったんです。…だが、その頃の私は、まだそれを把握し、受け止めることが出来ませんでした。それだけ子供だったと言う事です」
「…明智さんでも…そんなふうに思ったりするんですね」
「私だって、普通の人間ですから。それに、勝ち目のない勝負を挑むことがなかったから…臆病だったんですよ。…それは、私だけに言えることではないのですが」
「え…?」
も、臆病だった。だからこそ、彼女は僕になにも話してくれなかったんです」
「…さんが秘密にしていたことは、そんなに大変なことだったんですか?」
「…大変と言えば、そうなのでしょう。ですが、そのころの私はきっとそれを聞いて、逆に安心しただろうと思います」
「安心…?それって、さんが秘密を話してくれたから、ってことですよね」
「……それもあるのですが…」


もちろんそれもあるのだ。がずっと隠していたことを、いくら知りたいと望んだかわからないのだから。…だが、それ以上にその事実が、不謹慎にも自分を安心させるものだった。







その日の朝、教室に入ろうとした瞬間に、中で待ち構えていた赤沢につかまった。


「ちょっ…今はいるな!」
「赤沢…なんで?」
「いいからはいるな!ってかこっちこい!」


走り出した赤沢。僕はわけがわからないまま、彼についていった。…一体何があったのかは知らないが…なぜか僕の直感は、あのことがばれたのだと告げていた。




会議室には、かおるがいた。不安そうな顔をして座っていたのを、僕たちを見るなり立ち上がって駆け寄ってくる。…今にも泣き出しそうな表情だ。


「明智君…が…!」
「え…?」
が……今野先生とつきあってるって…」
「!」


やはり、そのことか。そう思った瞬間、全身から力が抜けた。…いろんなものが、吹き出して行った気がした。


と先生…呼び出されて…なんか事実確認がなんとかって……。ねぇ明智くん、、退学になったりは…」
「…わからない」


気のない返事を返してしまった。かおるがむっとして、僕に突っ掛かってくる。


「ちょっと明智くん!が心配じゃないの?!」
「心配だよ!……でも…」
「明智は…このこと知ってたんじゃないのか?」
「え……?」
「こないだ言ってた、の好きな人って…今野先生なんじゃないのか?」
「……確信はなかった。でも…」


ふたりして、美術室にいなかったあの日。焦って弁解した。それに、あの今野先生を見るの目は。


「……どうして?」


ぽつんと漏らしたかおるのひとことに振り返る。目尻いっぱい涙をためて、震えている。


「…どうしては…私たちになにも言ってくれなかったの…?」
「かおる…」
「だって私たち、知っててもなにも言わなかったわ!は友達だもの…先生とつきあってたって、それは変わらないわ…!」
「言いたくても、言えなかったんだよ。どこで聞かれてるかわからないんだから」
「…そうだけど…でも」
「とにかく、まとう。こうなってしまったらもう、俺たちが口出しできることじゃない」


赤沢がそう言って、かおるも渋々納得する。…そうするしかないんだから、しかたがない。でも、僕は今すぐにでも走り出したかった。…のために、何かしたかった。







校長室から、が戻ってくることはなかった。それは、"あのこと"が事実だったことを意味する。


かおるはあれからずっと机につっぷして、まともに授業を受けていない。赤沢も、…クラス全体がどこか上の空で、当てられても答えられない、何てことが連続した。3時間目の英語の先生は怒った様子で教室を出ていったし、次の時間の体育には、遅れていく人が続出して、一時間の半分を説教に費やした。…まさかが、と言う思いが、きっと皆にもあるのだろう。それと、今野先生は女子に人気が高い。…みんながそれぞれにショックを受けている。それも、当然だ。


僕は昼休みになると、一先ず昼食を済ませ、すぐに職員室に向かった。担任にのことを聞くためだ。…でも担任は何も詳しいことを教えてくれなかった。


分かりきっていたことなのに、腹立たしい。同時に、情けなくなった。…自分はのために、何もしてやれないのかと。
僕なんかが動いてもしかたないかもしれない。今の状況を打開することは出来ないだろう。でも…心の支えになら、なれるはずだ。…なのに。


―――僕は、それすら出来ない。


「―――明智!」


赤沢の声で、我に返った。のことを考えるあまり、周りが見えていなかったらしい。


「明智君…、ちょ、どうしたのその傷!」
「え?」
「えって…手!」


かおるの青ざめた表情で自分の手のひらを見たら、つめの後がくっきりとついている。中指のつめには赤い血がついていて、その部分にだけ、手のひらにも血が滲んでいる。


「明智…」
「…」
「―――のこと、何か聞けたのか?」
「いや…なにも」
「だと思ったわ。学校の名を汚すことになるかもしれない。そんなことをわざわざ教えるわけがないもの」


その通りだ。と今野先生のことが公に出れば、学校の評判が下がる。それを隠し通すには、生徒にだって事実を教えない…それが、学校だ。


「―――…いこうぜ、明智」
「え…?」


一瞬、赤沢が何を言ったのかわからなかった。…でも、目が語っている。
の所に行こうと。


その日、僕は学校をサボった。あとにも先にも、サボったのはこの一回きりだ。







表札に「」と書かれた家の前に、僕は立っていた。3人とも、インターホンを押す勇気がない。…もしかしたら追い返されるかもしれないと思って。…でも、そう思っていたら、何も始まらないし、終らない。
こんなにも怖いことがあるんだな、と妙に冷静に思って、ゆっくりと、インターホンを押した。

ピンポン、と聞こえて、数秒たって、受話器を取る音がした。


『―――はい』
「あ、あの…僕達、さんの友達で…その、明智と言います」
『…あら、明智君?からお話は聞いてるわ。…どうぞ上がって』


の母親らしき人に言われた瞬間、しまっていた黒い柵のロックがはずれる音がした。僕たちはゆっくりと、柵を押しあけて敷地内に入った。


玄関はとても感じがいい。ガーデニングを趣味に持つ人がいるんだろう。花が綺麗に裂いていて、横を見れば、テラスがある。…家自体も、かなり広いようだ。


「―――健悟?」
「っ!」


振り向くと、そこにがいた。白いスカートに、緑色のタンクトップ、その上に、黄緑色のセーターを羽織っている。


!」


かおるが走り出して、に抱きついた。はかおるをなだめながら、僕の方へ目配せする。


―――…いろんな気持ちが、一気に溢れ出していた。安心、不安、照れ、…いとしさ。


やっと、わかった。僕は、が好きなんだ。彼女が好きで好きで…だから、と今野先生のことを聞いたとき、あんなに腹が立ったんだ。


…俺等、心配したんだぜ」
「そうよ!校長室に呼び出されたっきり、戻って来ないんだもの」
「ごめんなさい…」
「あやまんなよ。それより、思ったよりも元気そうだから安心したぜ」
「うん…からだも心も、元気よ。心配しないで」


はそう言って、微笑んだ。でも、口では平気だと言ってるけど、随分無理をしているように見える。


「それよりみんな、学校は…?まだ授業やってる時間でしょう?」
「さぼってきちまったよ、おまえのせーで」


信じられない。そんな表情を浮かべただが、赤沢がへへ、と照れくさそうに笑うと、やっといつもと同じ、やわらかな笑みをもらした。


「明智、ほら。お前もなんか言ってやれよ」


が、僕を捕らえる。その目は少し優しくなっていて、僕はそのことに少しだけ、怒りみたいなものを感じた。


「―――
「…」
「僕は、に謝ることがある」
「え…?」


謝らなければと、思った。突然。


「僕は…今野先生とのこと、勘づいていたよ」
「!」
「君は、先生が好きで、二人で時々いなくなっていたんだ。美術室にいなかったあの日…
「ちょ、ちょっとまって健悟っ」


何故だか焦った様子のが言った。


「私が先生のことをすきって、それは違う…。ねぇ、説明するから、聞いて頂戴」
「説明…?僕の言ったことよりほかに、一体なにがあるって言うんだ?」
「いいから聞いて!…ここじゃなんだから、中に入りましょう」


は、少し怒った様子だった。でも、正直怒りたいのは僕のほうだ。その理由は、とても身勝手なものだけれど。




通されたのは、の部屋だった。白い壁に、緑のカーテン。一人部屋にしてはとても広く、大きめのベットが窓側にある。彼女らしい、爽やかな趣味の部屋だ。部屋の真ん中にあるテーブルは、ガラス製の物に黄緑のテーブルクロスが掛けてある。さっきがもってきたケーキが、四人分置いてある。その周りに座った僕たちは、その風景にあまりにもそぐわなくて。…暗い表情で、一人もしゃべらず、動かない。
開いた窓から入ってくる涼しい風が、さらに僕たちの気まずさを増していく。これから一体、の口からなにが語られるんだろうか。それはきっと、僕が予想もしなかったことなんじゃないか。少し冷静になった今なら、そう思える。いや、もう、そうとしか思えない。頭のいいが、下手ないいわけをするわけはない。今黙っているのは、いいわけを考えているのではない。どこから僕たちに伝えるべきかを、考えているんだ。

やがてゆっくりと、が口を開いた。


「…私と先生は…もと、恋人なの」
「っ!」
「今は違うし…お互いにそんな気持ち、少しもないの。だって私たち、兄妹、だから」
「え…兄弟って…」
「両親の再婚。父親が、義理なの。…私が5歳の時、病気でなくなってね。それから母はずっと一人で私を育ててくれた。…でもね、通っていた病院で、今の父と知り合って、再婚したの」
「そのお父さんの子供が…」
「そう、今野先生。今野は、先生の母方の姓だって。…私達、すぐに付き合いはじめたの。お互い、初めて会ったはずなのに、全然そんなこと感じなかった。それは、もちろん両親には内緒だった。…でも、ばれてたんだよね。それでも私たちは元々は赤の他人で、他人同士の恋愛は自由。両親とも、何も言わずにいてくれてた。…でもね、言わなきゃいけない時が、きたの。…私が、秀央高校に入るとき」
「恋人同士だと、まずいからだろ?」
「もちろんそれもあるけど…実は、家族が同じ学校にいるのも、あまり良くないらしいわ。恋人にしても家族にしても、その人を優遇するかもしれないって言う危険性は同じでしょう?もちろん、今野先生はそんなことしないけど。…でも、そうだからと言って、許されるわけではない。だから私と先生は、二人で相談して、…別れようって、言ったの。そのときはつらかったけど…もう少しも好きな気持ちはないの」
「じゃあ…今野先生を見て赤くなってたのは?」
「あぁ…スケッチブックはこんだときでしょう?なんか年甲斐もなく笑ってたから、恥ずかしいなって思って」
「二人でいなくなってたのは?」
「あれは、夕ご飯の買い物お母さんに頼まれてたのを一緒に買いにいってたの。私はまだ学校に用事があったから、美術室をあけてったんだけど…先生はもう家にかえるって言うから」
「一緒にすんでるのってまずいんじゃないのか?」
「一緒にはすんでないの。先生は今一人暮らししてて、週に一度家に帰ってくる程度。…だから、そのときは荷物だけ運んで貰ったの」
「…そんな、こと…?」
「え?」
「なんだ…それだけのことだったのか…はは…」


考えすぎ、だったんだ。何てことだ。勝手に勘違いして、を避けて、きつい言葉を言ったりして。しばらくまともに話していなかった。


どうして自分で勝手に決めつけたりしたんだろう。疑問に思ったなら、に聞けば良かったんだ。


「…じゃあ、イヤミを言われたのをそのままにいてたり、明智君との噂をそのままでいいって言ったりしてたのは…?」
「―――それは、先生との変な噂がたつよりよっぽどマシだって思ったから。それに、何かしらで噂になってたら、その人に関する別の噂があっという間に広まるのは普通でしょう?何かあったらすぐ分かるんじゃないかって思って」
「そんな…」
「―――…それに」


ちら、と僕の方を見て、顔を俯ける。…頬が少しだけ、赤く染まっていた。


「……?」
「な、なんでもないの。気にしないでっ」
「なんだよ、気になるな」
「ホントに何でもないんだってば!それよりほらみんな、ケーキ食べようよ。私のことならもう大丈夫。明日からちゃんと、学校に行くから」
「本当に?」
「うん」


ふわっと笑って、はフォークを手に取った。それを合図に、僕たちもケーキを食べはじめる。


近頃ではすっかりなかった気がする。こんなに安心できた時間は。







かおると赤沢は、二人で帰っていった。僕だけは家の方向が違うから、一人で帰ることになる。…だけど、が送っていくと聞かなかったので、僕たちは玄関の前で立ち往生していた。


「いいよ、別に」
「いいの!私が送っていきたいんだから」
「だめだ。女の子を一人で帰すわけには…」
「…健悟と、話がしたいの。とても、大切な話」


が少し顔を俯けて言った。


僕に、話?一体どんな話なのか。怒られるのだろうか、それとも…。


「…仕方ないな」
「健悟…」
「なら、散歩に行こうか。近くに公園は?」
「! 公園なら、ちょっといったところある!」
「じゃあそこまでいこうか」


さりげなく、に手を差し出して見る。彼女が、ちゃんと僕の手をとってくれる。…それが嬉しくて、僕はずっとの顔ばかり見ていた。

こんな風に二人で並んで歩ける。気持ちがとても晴れやかだ。


「…心配掛けて、ごめんね」
「気にしなくていいよ。…それよりが元気そうで、ホントに良かった」
「ありがとう。…ねぇ、健悟。 …その、…相談、してもいい?」
「相談…?」


こく、と頷いたは、一瞬歩みを止めて、僕を見た。それからまた歩き出したけれど、その表情は曇っている。


「…今野先生が、ね。いなくなるんだって…」
「え?」
「秀央から。…学校側の処分だから、」
「それは、君とのことがあったから…?」
「家族を同じ学校に置いておくわけには行かないって」
「…さっきから思っていたんだけど」
「?」
「家族だってこと、隠していられるものなのかな」
「…本当は私、秀央高校には来れないはずだったの。先生のことがあったから。…でも、秀央は都内随一の進学校だって言われてたし、それに、色んな勉強も充実してたし…先生が学校にいなくても、どうしても私は秀央高校に入りたかった。だから、親に無理を言ったの」
「それが、今までばれないまま来てたんだ…」
「そう。でも、今回のことでばれちゃった。…なんかね、私が先生の家に入っていくところ、見られちゃったんだって。ただ夕ご飯作りにいっただけなんだけどね」
「…」
「…ねぇ健悟…どうにかならないかなぁ…」


の声が震えはじめた。…僕は、彼女に何も、言葉を掛けてやれなかった。


「…だって、私のせいなんだよ。私が秀央に入りたいってわがまま言わなければ…」

「だから、先生じゃなくて本当は、私がいなくなるべきなんだよ。なのに…」
「…」
「なのに、絶対いなくなりたくない、そう思っちゃうの」


ようやくの言っていた公園について、は顔を見られたくない、と言ったように僕に背を向けて走り出した。その行き先は、ブランコ。夕闇の中公園に人影はなくて、しんと静まり返っている。僕は背を向けてブランコに座るに、ゆっくり近づいた。


「…
「私、わがままなの。だって、この学校はとても楽しくて」
「…」
「みんな、すごく優しくて」
「…
「クラスの皆も、赤沢君も、かおるも…」


の正面に回る。…俯けた顔から、ぱた、と雫が落ちた。


「――――…健悟と、離れたくない!」


がぱっと立ち上がったと思ったら、いつのまにか、僕の胸の中にいた。…すすり泣く声が聞こえる。肩が震えていて、それにあわせて髪の毛が揺れている。…僕は、の背中にそっと、両手を回した。

秋が僕たちに何も言わなかったのは…ばれて、学校からいなくなるのがいやだったから。嫌われるのがいやだったから。…臆病だったんだ、秋は。


「僕だって、離れたくない」
「…健悟っ」
「自分がいなくなればいいなんて、そんなこと言わないで。…は、自分のしたいことをしたまでだ」
「でもっ」
「僕は、が秀央にきてくれて良かったと思ってる」
「っ」
「だって、…こうして、出会えたんだから。は、そうは思わないの?」
「おも、う、けど…」
「なら、先生がこの学校に入れない分…が楽しめばいい。それでいいんだ」
「…うん」


ぎゅ、と僕の制服を握って、額を押し付けるように泣く。その姿を見ていたら…気持ちが一気に溢れ出してきた。


、」
「…?」
「すきだ」
「っ」
「…迷惑かもしれないけど…僕は、がすきだよ」


の体を少し離して、目を見つめる。驚いているけれど、戸惑っている風ではない。…嫌がってるようにも見えない。


「…も」
「え?」
「…わ、たし、も」
「!」
「…すき、だよ。…健悟」


泣きはらした顔のまま、笑顔を作った。その表情があまりに弱くて、…僕は、に口付けた。




その日、僕たちは友達から、恋人になった。









2006.08.02 wednesday From aki mikami.