Happy Birthday!! 山崎退 2/6




2月6日。


今日という日をずっと待ちわびていた山崎。それはもちろん、彼女のに誕生日を祝ってもらえるからだ。何日も前からケーキを手作りすると知らされていたし、のことだ、それ以外にも当然何かプレゼントを用意しているはず。起きたらすぐにのところに走ろう、そう思っていたはずなのに…


「どこいくんでィ」


そういって山崎を呼び止めたのは沖田だ。それを皮切りにぞくぞくと隊士たちが集まってきて…


道場に全員集められて、近藤が高らかに告げる。今日は山崎の誕生日パーティだと。


だが、山崎は思った。これは間違いなく嫌がらせだと。彼女がいない隊士たちは、かわいい彼女の元へ出かける山崎に嫉妬しているのだと。


「いやー、やっぱ誕生日はみんなで祝うのが一番だ、なァジミー?」
「そうそう、やっぱ家族で祝うのが一番だ、なァジミー?」
「俺たちは家族みてーなもんだ、なァジミー?」
「……あんたら、いい加減にしてくださいよ」


先ほどからずっとこんな調子で、いい加減抵抗するのも飽きてきた山崎。だが、かわいい彼女はきっと自分が来るのを待っているはず。そう思ったら、面倒でもささやかな抵抗をやめるわけにはいかない。…彼にしては珍しく、イライラが募ってきたとき。


ドドドドドドドドッ!!


低い音とともにかすかに建物が揺れた。隊士たちがなんだなんだと首を回してあたりを伺う。…音はどうやら外から聞こえてくるようだ。


どんどん近くなるその音に、山崎は軽い寒気を覚えた。…自分はまだそこまで怒らせたことはない。ないが、被害にあった人間を何人も見てきた。そう、酔っ払い、セクハラ親父、ストーカー、その他諸々…お妙ほど頻繁ではないが、キレたときはそのお妙よりも恐ろしい表情で相手を半殺しにする、その姿はまさしく鬼。


「…てめぇらァァァァァァァ!!!!!!」


怒号とともに障子がものすごい勢いで開け放たれ、そのあまりの衝撃に障子は外れ破壊され、壁にはヒビが入った。…その場がしぃんと静まり返る。


「人の彼氏奪ってんじゃねーぞォォォォ!!!!」


飛び上がると、そのまま蹴りが近藤の顔面に直撃。…それをみて逃げようとした隊士の頭をつかむと、ぐぐぐ、と音が鳴りそうなほど強くつかみあげた。


「オイ、死ぬ覚悟は出来てんだろうな」


ケーキの入った箱、プレゼントの淡いブルーの包装紙、ピンクの巾着袋、いつもよりきれいな着物。…こんなにかわいい格好をしているのに、その顔は鬼以外の何者でもない。


そう、それは山崎の愛する彼女、だ。


はつかんでいた隊士を床にたたきつけると、その視線を山崎へ向けた。そしてその一直線上にいる隊士たちをすべて払いのけて、山崎の前まで来るとそこにしゃがみこむ。…そして、いつもの優しくてかわいらしい顔に戻って、にっこりと笑った。


「退さん!会いたかった!」


首にきゅっと抱きつくその力は、女らしいかわいらしい力。山崎は引きつった笑顔を浮かべながら、彼女の頭をぽんぽんとたたいた。


「ごめんね、助けるのが遅くなっちゃって。あ、ケーキ持ってきたんだ、あとこれプレゼント、はい!」


箱と袋を一緒に差し出して、恥ずかしそうに顔を赤くする。…その周りには、ぼろぼろになって床に転がる隊士たち。まるで戦場でピクニックでもしているようだ。


「あ、ありがとう、
「いいえ!…あの、ケーキ…あんまりおいしくないかもしれないけど…」
「そんなことないよ、が作ってくれたものなら…」
「そんな、…恥ずかしい…!」


恥ずかしいのはオメーだよ。…そんなことを思ったのは、少し離れてみていた土方十四郎だ。その隣にはにやにや笑っている沖田。…彼がこうなることを予測して山崎を呼び止めたかどうかは定かではないが、その表情は満足げだ。


そして、山崎とはそのままそこでラブラブな誕生日を過ごし、隊士たちは目が覚めると同時に、の恐ろしさに一目散にその場を逃げ出していきましたとさ。めでたしめでたし。


「…って、昔話!?」


オマケ ▼

アトガキ ▼

2009.02.06 friday From aki mikami.