Happy Birthday!! 河上万斉 5/20




じ、と見つめると、一瞬瞳をくれて、知らんぷり。
つん、とつつくと少し足を揺すって、また知らんぷり。
くい、と引っ張ると私の手を掴んで離して、また知らんぷり。
切なくなって、ねぇ、と声を掛けると、表情は変えずに振り向いて、なんでござるか。


「寂しい」


そうひとこと言えば、気怠げに身体をこちらに向ける。そして表情も変えずため息もつかずに、ゆっくりと手を伸ばすのだ。


私はその手をとって、軽く握って、自分の方へ引き寄せる。イスがきしんだ音をたてて、温かい腕に包まれる。じんわりと伝わる優しさと愛情に、心がすっと静かになっていく。


交わす言葉はとても少なくて、触れ合うこともそんなに多くなくて。この人がどうして私と一緒にいるのかわからないときもあるけれど、こうして触れ合うだけで安心できる。なんともいえない不思議な感覚、これが「愛」ってことなのかなと、ぼんやりと思う。


ヘッドホンからもれ出るほどの大音量の音楽。それでも万斉は、私の声を聞き逃さない。どうして、と聞いたら、の声は良く通る、と、低くゆったりした声で返した。


「…万斉の声のほうが、通ると思うよ」
「そうでござるか?」
「そうだよ。…ねえ、だから、いって」


その声で、愛してるって。


「……なにをでござるか」
「わかってるくせに」
「拙者超能力はござらん」
「そんなもの、いらないよ」


ただ私の目をみて、感じてくれればいい。ねえ、万斉。


万斉は一つ小さく息を吐くと、柔らかく私の唇に触れる。そこにキスを落として、ふわりと髪が掻き上げられる。寄せられた唇が、ほしい言葉をささやいた。


「愛してる、


ほら、わかるじゃない。思わずくすりともれた笑いに、万斉が少しすねた顔をした。私はそんな彼の頬に触れて心から熱い、甘い口付けを落とした。


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2009.07.19 sunday From aki mikami.