放課後、校門で待ってて!
そう元気に告げた彼女を、一人きりで待つ俺、山崎退。今日は記念すべき俺の誕生日で、彼女と一緒に今日という日をラブラブで過ごす予定でいる。ほかのみんなは受験だ何だといっているけど、俺も彼女も推薦受験だから関係ない。というわけで午前だけの授業を受けて、校門でじっと立っていると。
「さ、退くーん!!」
という、なんとも可愛らしい声。振り返るとそこにはいとしの彼女。手を振りながら俺のほうにかけてくる。
「ー!」
俺も駆け寄りながら名前を呼ぶと、とても嬉しそうな顔で笑う。ああッ、やっぱり笑顔が一番かわいい!ホント最高だ俺の彼女!
俺の目の前で立ち止まり、肩で息をしながらも最上級の笑顔で笑ってくれる。どーしてこの子はこうも俺のツボを心得ているんだろうか。
「あ、さ、さが、退くん、あ、の…!」
「ま、待って待って!そんなゼーハー言ってたら苦しいでしょ!ゆっくりでいいよ!」
「で、も…!早くしない、と、また!」
「また?」
「また!」
どかーん!!!!
のかわいい声をさえぎったのは、この場にそぐわない爆音。校内を見渡してみてもこんな音を立てる人なんてそういなくて、の言った"また"の意味がよーくわかった。
「…何勝手にいちゃついてんでィ」
「……沖田さん」
「"俺たち"のを独り占めしようたって、そうはいかねェよ」
「……土方さん」
そう、いつも俺たちの邪魔をするバカコンビ。普段はいがみ合っているくせに、こういうときばっかり休戦して全力で俺を殺しに来る。にベタベタ付きまとうわ当たりかまわずやってくるわしつこいわで、いい加減うんざりしている。
「お、沖田君!土方君!もうやめてよ!」
「あァ?何言ってんだよ。俺はを悪い夢から覚まそうとしているだけだ」
「こんなヤツと付き合ってたらがダメになっちまわァ」
「だ、だから!それをやめてっていってるのに!」
「オイオイオイ。こりゃもうダメだな。すっかり山崎病が侵食しちまってる」
「山崎病って何!」
「このままじゃが腐っちまう。やっぱにおいの元を断つしかねーな」
「くさるって何!しかもにおいって!ってか失礼すぎません!?」
「ウルセェ。病原菌はもう死ねやァ!」
「うわ、ちょォォォォォォ!」
「もういー加減にして!」
今にもバズーカが飛んでくるというところで、の信じられないほどの大声が響いた。沖田さんも土方さんもぴたりと動きを止める。…でも、たぶん無駄だと思うよ。からはすでに真っ黒いオーラが立ち上っている。
「おーきーたーくーんー? ひーじーかーたーくーんー?」
「「あ…」」
「あ… じゃねェェェェェェ!!人の彼氏に手ェ出してんじゃねェェェェェェ!!!」
ありえないほど俊敏な動きで二人に駆け寄り、こぶしを振り上げる。…だけど。
「、ストップ!」
俺のその声でぴたりと止まり、黒いオーラがしゅー、と消えていく。泣きそうな目がこちらを振り返って、どうして?といった。
「だって…今日は特別な日だよ?そんな日に、の怒った顔は見たくないから」
「さ…退くん…」
「だから…今日は笑っててよ」
「う、うん!」
最上の笑顔で答えてくれる。…俺はその笑顔で癒されてから、茫然としている二人を振り返り…これ以上ないほどの黒い笑顔で笑ってやった。
そう、
お前等を生かすも殺すも、俺次第ってこと…。
「じゃ、いこっか、」
「うん!」
死ぬほど悔しそうな顔をしながら手を出せない二人を尻目に、と手をつないで歩き出す。結局最後に勝つのは俺、暴力なんか使わなくても勝てるのが男。敗者は指をくわえてみているといい。
かわいいは、ずっと俺だけのもの。
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