今日は、土方君の誕生日。パーティをするからって近藤君に誘われた。で、土方君はパーティとかを進んでしたがるタイプじゃないだろうってことで、教室でのサプライズパーティをすることになった。今日は風紀委員会があるというので、私と、無理やりつれてきた(お菓子で釣った)銀八先生、神楽ちゃん、新八君とで、せかせかとパーティの準備をしていた…時だった。
「あーーーーーーーーーー!!!!!!!」
「な、なにアルか!」
「プレゼント、ない!」
「ああ…?」
銀八先生が、心底めんどくさそうな顔で振り返る。
「確かに持ってたはずなのに…」
「えー?忘れてきたんじゃないですか?」
「絶対ありえない!何度も何度も何度も何度も確認したんだから!」
だって、今日はそのためだけに学校に来たんだから!
「それにさっきかばんから出して…」
「あ、もしかしてココにおいてあった白い袋アルか?」
「そう!それだよそれ!」
思わず神楽ちゃんにつめよった。そんな私が怖かったのかもしれない、ものすごくなきそうな顔で、がくがく震えている。
「そ、それならさっき、ブス崎たちが持ってったアルヨ…!」
「な、何で!!」
「あー、あいつらマヨ方に気ィあったみてェだからなァ。やられたな」
「っ、ありえない!!!」
「叫ぶなよ。こーいうときこそ冷静にだなー…」
「…ってか、あそこにいるのってその例のブス崎さんじゃないですか?」
新八君が指差した先…窓の下に、女が5、6人群れになってこそこそ何かをやっている。…ん?てか、誰かと話してる?
…ま、いーや。私は窓に駆け寄って、勢い開け放ち叫んだ。
「コオオオオオオオオラァァァァァァァァ!!!!!!このブスどもオオオオオオオ!!!!人のもん盗んでんじゃねえェェェェェェェェェェェ!!!」
『げっ、見つかった!』
「今からそっちいくからなァゴルアァァァァァ!!!」
言いながら全速力で走り出す。銀八先生と新八君が青い顔をしていたけど気にしない。神楽ちゃんが後ろから走ってきて、私も手伝っちゃるヨ!だって。
よっしゃァァァ!血祭りじゃァァァァ!!
二人で高笑いしながら階段を下りていく。玄関を抜けて、グラウンドとは反対側の校舎脇までたどりつくと、女豹軍団(爆)の前に男の子が4人立っているのが見えた…って言うか、あれって!
「ひひひひ土方君!と、そのおまけ!」
「何それ!ヒドイ!」
「こんなやつのオマケなんてゴメンだぜィ」
ま、そんなことはどーでもいいとして。どうして土方君がココに…って言うか、ヤバイじゃん!本人を目の前にしてプレゼント返せなんて…いえない!
「あー…えっとー…」
「何やってるアルか!早くこのブサイクどもを血祭りにあげるネ!なんたっての大切な」
「あー!いいややややああああ!」
「…うるせェよ。…っつーか、マジでなんか盗られたのか」
土方君が、瞳孔の開いた目をギロリとこちらに向けた。…普段は鋭くてかっこいいと思う目も、今日ばかりは探られてるみたいで怖くて仕方ない。
「え…えと…」
私が何も言わないでいると、土方くんはかなり怪訝そうな顔をして、今度は私のほうではなく女豹軍団(爆)に同じことを聞いた。
「…盗ったのか」
「…たよ」
「あ?」
「盗ったよ!あー盗ったさ!」
「…なんでんなことした」
「…だって、この女が生意気に土方君にプレゼントな
「わーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
とんでもないことを口走る女豹軍団(爆)の頭をぶっ叩いて黙らせた。ブス崎の服をつかみ上げ、馬乗りになるように地面に叩きつける。
「余計なこといわなくていいんだよ…それよりどこにやったの」
「ひぃぃぃぃぃ!こ、殺さないで!!!」
「うるっせんだよ…いいから場所吐け場所!」
「こ、こ…この先の…焼却炉に…」
「っ!」
そうブス崎が言うが早いか、指差す方向へと走り出した。焼却炉ってなに!燃やしたってこと!?人ががんばって作った…土方君に食べてほしくて、一生懸命愛情込めて作ったものを!
もくもくと煙の上がる焼却炉に駆け寄ると、鉄の扉を勢いよく開けた。金属だけあってそれなりに熱くなっていたけど、そんなことは気にならない。とにかく中身を確認しないと!
…と、思ったけど…正直、中身は確認するまでもなかった。
すっかり燃えて、灰カスばかり。形が残ってるものなんて、一つもなかった。
「…ひどい…」
思わずその場に座り込んだ。…この世の終わりのような気さえする。
「…せっかく…土方君のために、作ったのに…あげられなかったよ…」
この日のために、何度も何度もレシピを考えたのに!
「…!」
その声に顔を上げると、土方君が急いで走ってくるのが見えた。…でも私は、その姿を一瞬捉えただけで、すぐに顔を伏せた。…申し訳なくて、悲しくて、目があわせられなかったから。
「バカヤローが!煙出てんのに扉開けるヤツがあるかよ!あっぶねーだろ!」
「だって!まだ残ってるかもって思ったから!」
「残ってるわけねーだろ!」
「っ…!そんなのわかんないでしょ!」
土方君の言葉がショックで、思わず叫び返してしまった。反射的に顔を上げると…なぜか土方君の手には、白い袋が握られている。
「あるわけねーんだよ。…んなとこには入れてねーからな」
「え…だってさっき…」
「あいつらのうそだ。っつーか、あいつらさっきココにいてな。焼却炉囲んでこそこそやってたんでちょっと問いただしたら逃げやがった。…ま、あんなやつらに追いつくなんてわけなかったけどな」
「…それで…」
教室から見たとき、女豹軍団(笑)と話してたのは土方君だったんだ。
「で…その、よ」
私が納得していると、土方君が、…なぜか顔を赤らめていった。私と目をあわせようとしないので、照れているんだろうか。
「…その…これ」
「…?」
「俺が、もらっていいんだろ」
「!!!」
さっきの話で、やっぱりばれちゃったんだ!そう思ったら、急激に恥ずかしさがこみ上げる。ブス崎ィィィィ!あいつあとで殺す!!!
でも、ここまできたらもう引き下がれない!
「…う、うん。誕生日、プレゼント…なの。…受け取ってくれる?」
「……とりあえず、な」
そっぽを向いて、そっけなく言った土方君。…でも、この反応は多分照れてるんだと思う。…そんな反応されたらこっちまで恥ずかしくなってきちゃうよ。
「ひ、土方君のために…がんばってつくったの。どうしても…いいたいことがあったから」
「…」
「その…私…」
「…」
「ひ、土方君のこと!」
勢いよく顔を上げた瞬間だった。
…ずざあ!とすべるような音が聞こえたと思ったら、木のかげからはみ出るようにさっきまで一緒にいた人たち+銀八先生に新八君まで混じって地面になだれ込んでいて、…ああ、のぞいてたんだな、とわかった。…で、これ以上にないほどカチンと来た。今スイッチはいりましたー。
「テメェらあああああ!!!!!」
叫びながらみんなの方へと走り出すけど、それぞれ散り散りになって逃げていく。さすが逃げ足の速いヤツラめ。とりあえず運動の苦手な女豹軍団(爆)から捕まえて血祭りにあげていこう。そんなことを考えながら、…一瞬だけ、土方君と目があった。
その目は今まで見たどんなときよりも穏やかに、そして楽しそうに細められていて、…私の思いが伝わっても伝わらなくても、少しくらいお役に立てたのかなと思ったら、私まであったかい気持ちになった。
でも、やつ等は許してやらねーけどな!
(ギャアアアアアアアアアアア!!!!)
オマケ ▼