Happy Birthday!! 高杉晋助 8/10




※ちょっと頭の悪いヒロインなので耐えられない方はバック。


いつもクールで、ケーキ屋さんとは無縁そうな高杉君。そんな彼が、ケーキ屋さんの前を行ったりきたり、いったりきたり。…何をしているのかわからないけど、なんだか中に入りたそうにしているような。


「高杉君」
「ッ…!!!」


私が声を掛けると、驚いたように振りかえる。と、いうか、驚いたみたい。高杉君が驚くなんて、珍しい。


「どうしたの?」
「……なんでもねェ」
「? なんで? ケーキ屋さんに来たんでしょ?」
「ちげェよ」
「えー、だってさっきからいったりきたりしてるのにー」
「ッ、いつから見てやがった!」
「え?…えと、いつから……かなぁ」


私が考えていると高杉君は黙り込み、それからふぅっとため息をついた。あきれられちゃったのかな。


「ごめんね高杉君」
「いや…」
「ねえ、ケーキ屋さんはいるなら、一緒に入ろうよ!私もケーキ食べたくなっちゃった」
「なッ」
「だめ?」
「……入ってやらんこともない」
「やったー、なら決まりね!」


高杉君に許可をもらったので、ケーキ屋さんに入った。ドアを開けたとたん、甘いにおいがふわりと漂ってくる。ところで、高杉君はずっと私の後ろに隠れるように歩いてるんだけど、なんでかな?


「高杉君、歩きづらいよ」
「うるせェ。黙って歩け」
「もー。あ、見てみて!あのチョコレートケーキ、おいしそー!あっちのモンブランも!」
「いちいちいわなくてもしってらぁ」
「あ、高杉君もここのケーキ好きなの?私も良く食べるんだー、おいしいもんね!」
「そ、そうじゃねェ!」
「え?じゃあ…あ、ねえねえ、あそこにまた子ちゃんがいるよ!」


奥のレジでお会計しているのは、とってもスカートが短いまた子ちゃん。隣にはいつも三味線を持っている万斉くんもいる。


「なにしてるのかなぁ?」
「うるせェ、しゃべんな!気づかれんな!黙ってろ!」
「え、なんでェ?」
「いいから隠れろ!」


高杉君があまりに強く引っ張るので、言うとおりにトイレの影に隠れた。高杉君は二人と仲がいいのに、なんでかなぁ?高杉君はじっと二人を見ている。私もじっと二人をみた。


「こちらでよろしいですか?」


店員さんがまた子ちゃんに箱の中身を見せた。それをみてうれしそうにうなずいたまた子ちゃん。いいなあケーキ。私もほしい…。


二人はお会計を済ませてケーキの箱を持って立ち去った。その時歩きながらの二人の会話で、高杉君がどうしてここに入るのをためらっていたのかがわかった。


『よかったでござるな』
『もう完璧ッス!晋助様よろこんでくれるかなぁ、誕生日ケーキ!』
『しかし晋助は甘いものは食べれたでござるか?』
『そんなの知らないッス!こういうのは気持ちッスよ、気持ち!』


「…そっか、自分のお誕生日ケーキがどんなのかきになってたんだね。でも、後を付けてるのを知られたくなかったんだ」
「そんなんじゃねェ」
「またまたあ、強がっちゃって!」


いつもクールだと思ってたけど、こんなかわいいところもあるんだな。そういえば、そろばん教室に通ってたっけ。…もっと私が知らない一面、たくさんあるのかな。


「…帰る」


そういってさっさとドアに向かった高杉君を追いかけて、ドアの前で制服の端を捕まえる。


「待って!私も誕生日プレゼント… 何ケーキがいい?」
「…… ケーキ以外の物がいい」
「? ケーキ以外のもの?なに?」


そういった私に振り返った晋助君がしたことは、かるく、やさしいキスだった。


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2010.01.03 sunday From aki mikami.