Happy Birthday!! 近藤勲 9/4




※悲哀です。


ちゃんって好きな人いる?」


修学旅行とか放課後とか、何人かで集まるとよく聞かれる話。その度に私は、いないよ、ってうそをつく。そのたびに、もったいないなー、なとか、男紹介しようか、とか言われるけど、やんわりと断って、大好きな彼を思う。誰かに教える気なんてない。多分言ったら、すっごく変な顔をされて、でもあの人好きな人いるよね、って言うかストーカーだよね、とか言われて、ほかの人にしときなよ、とか言われるに違いない。そんなこと全部わかってて、他人に言われたくらいじゃ乗り換えるなんて無理で、だから今も好きなんであって。


ようするに、私は馬鹿なのだ。


昨日だって、部活の人もいないような遅くに、彼の靴箱に名前も書いてないプレゼントを入れて。彼はもらった瞬間、お妙さんからだ!って大喜びするに違いないのに。


これは私の自己満足だって、わかってるんです。


この教室は、いつもいつでも騒がしい。HR前のこの時間だって、ものが飛び交ったりけんかしたりで、.ほかの教室ではありえないほどにぎやかだ。そんな中でもひときわ目立つ、彼の声。妙ちゃんを追いかける、彼の声。 それを聞いているだけで満足だって、伝わらなくていいって、思っているのに。


毎年この日だけは、どうしても、悲しくなってしまうんです。


好きって言う気持ちは私の中でどんどん大きくなるけれど、どこにも吐き出すことができなくて。自分で育てた思いに押しつぶされるなんて、馬鹿なの、わかってるけど。


「…おい、


思考をさえぎったのは、土方君だった。首を振って彼に向き直り、笑顔を作る。


「なに?」
「今日の放課後、委員会あるから」
「あ、うん、わかった」


私は彼等と一緒に風紀委員に入っている。彼と少しでも一緒にいられたら、なんて思って入ったけれど、仕事自体はあまり私に向いていないように思う。それでもいい、少しでも顔を見れる時間が増えるなら。これもまた、自分勝手な考えだ。


「ありがとね」
「いや。…あー、それと」


まだ何か話が?土方君は少し困ったような顔をしていて、言いよどんでいるように思える。そんな顔をされるような話は何も思いつかなくて、私までちょっと困ってしまう。


「あの…なに?」
「…その…ありがとな」
「えっ」
「って、近藤さんが」


伝えたからな。そういって、土方君は自分の席に戻っていった。その直後に銀八が入ってきて、みんな一斉に席に戻っていく。銀八の出席を取る声を聞きながら、頭の中でぷすん、と、空気が抜けていった。


それは彼にとって、なんでもない一言だったのかもしれない。
もらったものに対するお礼、それ以外の何者でもないのかもしれない。
でも、それでも。


ー」
「…はい!」


好きでいてもいいよって、言ってくれているような気がして。
なによりこの気持ちが、伝わったことが嬉しくて。
でも、その言葉に込められた気持ちがわかるから、切なくて。


ああ、そうか。土方君があんな顔をしていたのは、私の気持ちも、近藤さんの気持ちも知っていたからなんだ。


やっぱりあなたは、とても優しい人だった。であったときからそう。人を傷つけないように生きているの。


だから、涙は見せません。その代わり、もう少し、好きでいさせてください。


ハッピーバースデー、近藤君。
大好きだよ。


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2010.06.25 friday From aki mikami.