Happy Birthday!! 坂田銀八 10/10




『えー、!話があるので放課後残るように!』


そう銀八に言われて、やってきたるは国語準備室。途中神楽ちゃんと妙ちゃんに、男の急所を狙うんだ!って言われたんだけど、まあそんな変なことは起きないはず。だって銀八、チキンだし。


そんなわけでコンコンとノックをすると、おー、とやる気のない声がした。入ります、と一声かけてからドアをあけると、机に足をかけて不機嫌そうにしている銀八がいた。


「なんですか、銀八先生」


私の言葉に、苦い顔をして入れ、と答える。…私は一つため息をついて、ドアをゆっくりと閉めた。


「…で、何?」


いきなりあんな風に呼びつけるなんて。みんなが変な顔してたじゃない。


「お前…」


机から足をおろしながら、じろりと私を睨む。…そんな顔をされなきゃいけないようなことは、なにもしてないと思うんだけど。


「…なにか?」
「今日…なんの日か知ってる?」


ぐっと腰をあげて、私の前まで歩いてくる銀八。…銀八のひとことで、私はすべての状況を理解した。


「銀八の誕生日」
「ああ、だよな。だったらなんかねぇの?」
「なんかってなに?」
「何ってお前…プレゼントだよプレゼント!ないにしてもせめておめでとうくらい言うもんだろォ!」
「はいはいおめでとう」
「はいはいってなんだコノヤロー!こちとらそのひとことがないせいでどんだけ悶々とした1日を送っていたか…!」
「知ったこっちゃないね。私にだって私のペースがあるし」
「せめてメールぐれェよこせよ…」


ふう、と息を吐いて椅子にどっかりと座り込む。拗ねたように顔を背けると、足元にあった紙袋を私に差し出した。


「…これ、全部今日もらったプレゼントだぞ」


…と、言われても。なんて思いつつも袋をうけとり中をのぞくと、中には確かにプレゼントらしきものがたくさん入っている。けど、見てもどうしようもないし、とりあえず銀八に返そうとしても受け取らないので、仕方なく机の上に置いた。…銀八はまだ拗ねたままだ。


「…銀八」
「………」
「銀八…」
「…………」
「銀八ッ!」
「……………なに」
「私いくから」
「はっ!?」


ものすごい勢いで立ち上がる銀八をよそに、扉を開ける。慌てて私をつかもうとする銀八をすり抜けて、ドアから一歩踏み出して振り返る。


「ねえ銀八。片付けするといいことあるかもね。例えば…職員室のジャンプの山とか」
「え…」
「そうそう、私これから明日のテストの勉強するから…そうだなぁ、6時ぐらいまでかかるから、"さっさと帰るんだよ"?」
「はっ…!?」
「じゃあねーん」


そう言って軽やかにその場を後にする。後ろから、はあああああ!?という銀八の叫び声が追いかけてきて、思わず笑みが漏れる。


意地悪だってわかってる。…けど、これくらいいいよね?朝一で受け取ってもらえるようにってジャンプの裏側に隠して置いたプレゼントに、ぜんっぜん気づいてないんだから。


私の隣を銀八がけたたましい音をたてて駆け抜けていく。目が合った一瞬このやろ、といわれたので、私は思い切り、背中に向かって叫んでやった。


「廊下は走っちゃいけませんよ先生!」



2009.11.21 saturday From aki mikami.