spring



「あ…」


新学期。
登校して来て玄関に貼られた紙を見て、私は嬉しいような悲しいようなかなり複雑な気持ちになった。それは私の新しいクラスが、…「あの」3-Zだったからだ。


3年Z組といえば。


学年中の問題児が集結し、テストの平均点は学年一低いが運動に関しては学年一、でもそれとは関係ないところで点数を引かれて結果はいつも最下位。器物破損の常習犯、遅刻、早弁、その他諸々、毎日事件と叫び声が耐えない魔のクラス。つまり私も問題児の仲間入りだということだ。…それが悲しいといった理由。そして嬉しい理由は…


私が、Z組担任、坂田銀八を好きだから。


正直、彼のクラスになんて絶対なれないと思っていた。なぜなら私は自分でも言えるくらい成績優秀だし、運動も普通に出来るし、先生受けも悪くないからだ。…だが、やっぱり去年のあの騒動のせいか…校長には問題児だとみなされてしまったらしい。


騒動、というのは、私が銀八を好きになったきっかけ。ドラマのような美しいエピソードではないけれど、私にとってはかなり心に残る出来事だ。


私はそのときのことを思い出しながら、教室へと向かった。







当時2年生だった私は、付き合っていた男にふられた。理由は多分、お前より好きな人が出来たから、だったと思う。それなりにショックを受けて、電話番号を消してみたり顔を見ないようにしてみたり色々していたけれど、あるときその男から突然電話がかかってきて、やっぱりもう一度付き合おう、といわれた。その言葉にカチンと来た私は勿論断ったけど、そいつは何度も言い寄ってきた。新しい彼女が相当重いらしい。


何を言われても無視し続けていたら、ある日突然、彼女の方が私の元へやってきた。その彼女の言い分は、私の彼に手を出さないで、ということらしい。何て勝手なことをいってるんだろうと思ったが、面倒なので適当にあしらって追い返した。


そうしたら、今度は担任に呼び出された。意味がわからなかったが、どうやら彼女の成績ががた落ちしたらしく、それが私のせいだと親が言い出したらしい。で、私と私の担任と彼と彼女と彼女の親とあの二人の担任が校長に呼ばれるという大騒動になった。


…で、そんな空間にいきなり入ってきたのが銀八だった。何でも校長に用があったらしく、ドラマの再放送みたいんでさっさと帰らせて下さい的なことを言いながら乗り込んできたような気がする。そんなことを無視して彼女の親はヒステリックに私を罵倒し続けていた。


それがあまりにひどくて、私の担任も向こうの担任も校長もみんな困り果ててしまったとき、これまたいきなり銀八が割り込んできたのだった。


「…お母さんよォ。ガキの恋愛に口出すなんざ野暮ってもんでしょう」


そういって小指で耳をほじる銀八。逆の手は気だるそうに白衣のポケットに突っ込まれていた。


「なッ…こっちはね、この子のせいで評定平均1.7も落とされてるのよ!この子は将来医者になるんです、それをこんな子のせいで…!」
「勉強も恋愛も自己責任でしょーが。恋愛して成績落としたんならそれはこいつのせいじゃない。本人のせいですよ」
「なんですって!」
「大体、てめーの子供の言葉全部鵜呑みにして、叫び散らして…テメーの子供が思い通りにならないからってこんな子供にあたることねーでしょう」
「アンタ…いきなり出てきてなんなの!さっきから聞いてれば勝手なことばかり言って!それにテメーテメーって、なんて言葉遣いなの!」
「ささささ坂田先生!それ以上は!ホントそれ以上は勘弁して!」
「なにいってんですか。学校がそんな弱腰だからモンスターペアレントが増えていくんでしょうが 」
「なんですってェェェ!!」
「あー、もうメンドクセーなァ」


そういって頭をかきながら、私の目の前にやってきた銀八。…顔を上げて目を合わせると、かなりだるそうに私を見据えて言った。


「オメーもよォ。ふるんならちゃんとふってやれって」
「…はァ」
「オメーになんか興味ねーんだよ、二度と近寄るなこのちんかす、くらい言ってやんねーと。ちゃんと男をふって諦めさせるってのもモテる女の仕事なんだぞ?男ってのは諦めわりーからな」
「…」


突然やってきてなにを言い出すんだろう…と思ったけど、私は自然と立ち上がっていた。そして元彼の前にたって、銀八が言った言葉をそのままはき捨ててやった。


「オメーになんか興味ねーんだよ、二度と近寄るなこのちんかす」


そのまま私はその場を飛び出した。…担任が茫然としていたのが横目に入ったけど、気にしなかった。当然場はしーんと静まり返っていたけれど、しばらくしてあの母親のヒステリックな叫び声が聞こえてきた。…当然、それも無視した。


その翌日、銀八が校長に放送で呼び出されていて、気になったので校長室の前で立ち聞きしたら、一週間の謹慎と3ヶ月の減俸それにボーナスカットの処分を受けていた。ぶちぶち文句を言っていたけれど、それを私に向けてくることはなかった。







今考えると、私へ処分が及ばなかったのは銀八がフォローしてくれたからなのかもしれない。本当にそうなのかはわからないけれど、とにかく私へのお咎めはなかった。


…でもあんなことはき捨てて出て行ったら、そりゃあ問題児だと思われても仕方ないだろう。校長、青い顔してたし。ちなみにあの後、あの彼女は転校していったのでおそらくあの二人は続いていないだろう。まったく迷惑なカップルだ。


それにしても、あんなんでどうして好きになってしまったんだろうか。そんなことを頬杖をつきながら考える。…まァ、コレまで何度も何度も考えて、答えなんて一度も出たことないけど。


教室内はとても騒々しい。叫び声とか叫び声とか叫び声とかが、多分向こうの廊下まで響いているに違いない。


「オーイオメーら席につけー」


そういって銀八が入ってきた。そのスタイルはいつもと同じ、スーツのズボンにワイシャツにゆるゆるネクタイ、白衣にメガネに煙草にサンダル。みてるだけで気だるい気持ちになれる。


教壇に立って前を見据えると、煙草の煙をゆっくりと吐き出した。


「あー、なんだ。今日からオメーらも3年生になるわけだが、クラス替えもしたことだし気持ちも新たに… あー、やめた。やっぱやめた。メンバーなんてほとんど変わってねーもんなァ」
「先生ー!変わってまーす!志村くんと山崎君がいませーん!」
「「んだとコラァァァ!ちゃんと目を開けェェェ!」」
「あれ、いたのかィお前ら。全然気づかなかった」
「ふざけんなァァァ!僕は地味っていってもなァ、こいつほどじゃないわァァァ!」
「ちょ、何言ってんの新八くんんん!」
「オイうるせーぞ山崎。 …っつーかオメーら、新しいメンバー入ってきたってのに反応なしか?あ?」


そういって銀八が私のほうへと歩いてきた。みんなの視線が一気に私のほうへ集まる。


「ホレ立て、。オイ見てみろテメーら。新メンバーだぞ。はいじゃー自己紹介」
「…です、よろしく」
「ってそれだけかよ。オメーなァ。もっとなんかねーのかよ。趣味とか特技とか好きな色とか下着の色とかよォ」
「先生ー!それはセクハラだと思いまーす」
「うるせーぞ神楽。下着は男のロマンなんだよ」
「先生ー、そんなロマン要りませーん」
「ばっか、何言ってんだヅラ。お前だって去年帰りにゲオでアダル…」
「ごごごごご誤解です!僕は断じてそんなところいってません!人妻なんて一切興味ありません!」
「って好みまで暴露してんじゃねーか!バカかお前バカか!」
「新八ィ、オメーもそんなこといって、萌えっ子倶楽部とかかばんに忍ばせてんだろ」
「忍ばせてねーよ!なんで学校でエロ本読まなきゃいけねーんだよ!」
「……あのー…」


ヒートアップする会話を遮ってそういうと、銀八があー、とアンニュイに言って、教壇のほうへと戻っていく。


はなァ、校長の前でストーカーの元彼に『オメーになんか興味ねーんだよ、二度と近寄るなこのちんかす』と言い放ってこのクラスに飛ばされた可愛そうな女の子だ。まァ仲良くしてやれや」
「アンタに言わされたんだろうが!っつーかかわいそうだと思うんなら人の傷口ほじくるんじゃねーよ!」
「はーい、もうすでにこのクラスに溶け込んでまーす。っつーわけで仲良くしろよオメーら」


そういって名簿を開くと、じゃー出席とるぞ、とこれまたアンニュイに言う。…仕方なく席に座ったけれど、恥ずかしい。恥ずかしすぎるよコレ。


そのまま出席を取り終わり、かなり適当な連絡を聞いてSHRが終わった。…で、銀八がいなくなると、教室が一気に沸いた。みんなが一気に私のところに集まってくる。うわ、笑われるのかな、恥ずかしいよホント恥ずかしいよコレ。…と思っていたけれど、みんなの反応はかなり予想外だった。


!私神楽!よろしくアル!」
「え…ああ、よろしく…」
「私は志村妙よ。よろしくね」
「う、うん…」
「ねえちゃん、さっきの話だけど…」
「え、あ、…えっと…」
「ダメよ。ストーカーを撃退するんならもっと強くやらなくっちゃ。ぶん殴って二度と立ち上がれなくするくらいじゃないと」
「……え?」
「ねェ神楽ちゃん?」
「そうアル!アナログスティックもぎ取ってやるくらいじゃなきゃダメヨ!姉御を見習うね!」
「見習う?」
「姉御もストーカーされてるアル!…でもそんなんで引き下がるなんてストーカーもたいしたことなかったアルな」
「はァ…」
「お互い、いい女は苦労するわよね」
「…いや、志村さんはすごくきれいだけれども」
「やだ、志村さんだなんてよそよそしいわ。妙でいいわよ」
「…じゃ、じゃあ妙ちゃん…あの、私は別にいい女じゃ」
「ねーねーは酢昆布好きアルか?」
「え、酢昆布?」
「たまご焼きは好き?今度作ってくるわよ」
「えェ?」
「っつーか、お前らばっかりしゃべりすぎだろ」
「なにアルかマヨラ。そんなにとしゃべりたいアルか。それならマネージャーにアポを取ってもらわないと」
「マネージャーなんてどこにいるんだコラァ」
「ちょっとやめてよ二人とも。…あ、僕志村新八、よろしく」
「…よろしく」
「私たち兄弟なのよ」
「え、兄弟で同じクラス?」
「…そこはつっこまないで」
「あーもうオメーらうるせーよ。…俺は土方十四郎だ。お前、マヨネーズは好きか?」
「へ?…ま、まァ好きですけど」
「そうか!オメーとは気が合いそうだな!」
「副委員長、マヨラー仲間拡大しようとするのはやめてくだせェ。あ、俺沖田総悟。ところで君はさァ、いじめられるの好きかィ?」
「はッ!?」
「何を聞いてるんだ総悟!…あ、俺は近藤勲。風紀委員長だ。…ところでゴリラは好きですか?」
「はァ?」
「貴様等!いきなり質問攻めにしては彼女も困るだろう!…俺は桂小太郎。こっちはエリザベスだ。よろしく」
『よろしく』
「よろしく…」
「ところでラップは好きか?」
「ってオメーも質問してんだろーが!」
「……あの」


私を離れて勝手に盛り上がっていく会話を遮った。みんなの視線が一斉にこちらに集まる。


「あの…私トイレに行きたいんだけど」


そういうと、みんなは意外とすんなり道を開けてくれた。…なんていうか、さっぱりしてるっていうか…よくわかんない人たちだ。


私はみんながあけてくれた道を通って教室を出た。それから早足でトイレに入って、個室に駆け込んでドアを閉める。


…さ、騒がしい。


っつーか何あの質問攻め。あんなに長い会話始めてみたから!会話オンリーの小説じゃないんだから!


なんてことを思いながら便器に座り込む。ホント、噂どおりの騒がしさだわ。あんだけみんな騒がしかったら、…もういい子ちゃんぶる必要ないじゃん。何もしなくても私いい子だわ。っていうか絶対質問おかしいよ。食べ物はまだいいかもしれないけど、ゴリラとかいじめられるのとかラップとか…どんどん意味不明になっていくよ。っていうか桂くんって人、あの人ラップやるわけ?全然似合ってねーよ!あとあのエリザベスとか言う白い生物何!あんなのもう人じゃねーよ!


…でもまァ、悪い反応ではなかったし…何とかうまくやっていけそうな気がする。妙ちゃんもストーカーされてるっていうし…思ったより話はずんじゃったな。


意味もなく水を流して個室を出た。…さっきの騒がしさがまだ耳に残っていて、これまた意味もなくドキドキする。


…もしかして。
銀八は、こうなることをわかっていてあえてあんな紹介をしたんだろうか。妙ちゃんがストーカーされていて、私たちの話の種になるように。…考えすぎ、だとは思う。けど、そう思わずにはいられない。


余計な考えを振り切ってトイレを出た。3Zの教室からは、近藤君らしき大絶叫が聞こえているけれど、一体何があったんだろうか。


そんなことを考えながら、私は新しいクラス…3年Z組へと戻った。







そんな新学期から数週間。桜もすっかり散ってしまった、五月のある放課後のことだった。


たまたま忘れ物をして教室に行くと、そこに銀八がいた。他の人間の姿はない。影に隠れてこっそり見ていると、どうやらチョークの補充をしているらしかった。


先生らしいことをしている姿を殆ど見掛けないので、珍しくてじっと眺めていた。長くてゴツゴツした指がチョークを掴み、一本一本チョーク受けに入れていく。…案外几帳面なんだろうか、そんなことを思った。そうしたら一瞬ピタリと止まって、だけどまたすぐに動作を再開する。


「覗き見は質わりィぞーー」
「ッ!」


いきなり呼ばれたことに驚いて肩を震わせた。銀八はまったく振り返らないで、淡々とチョーク補充を続けている。…ドアから一歩だけ中に入った。


「な…なんでわかったんですか」
「あんだけバタバタ足音してたら嫌でもわかるっつーの」
「わ私かどうかはわからないでしょ!」
「あんな気配丸出しで歩くのはウチのクラスにはお前しかいねーの」
「け、気配って…そんなの分かるわけ…」
「これがわかるんだなー。先生には」
「に…忍者かアンタは…」
「んー、どっちかってーと侍だな。俺隠れるのは苦手だし」


そう言ってこちらを振り返る銀八。…窓から差し込む陽光に、銀色の髪がキラキラ光っている。歩み寄ってきて、意地悪い笑みを浮かべながらわざとらしく顔を覗き込んでくる。


「で?なんで覗いてたわけ。もしかして先生に見とれてた?」
「そ、そんなわけないでしょ!先生らしいことしてるのが珍しかっただけです!」
「オイオイ、いつも普通に授業してんじゃねーか。立派に先生だろ俺」
「どこが立派ですか!アンタほど適当な先生他にいませんよッ」
「お前なー、人間ってのは適度に気ィ抜かないとダメなんだぞ?」
「気ィ抜きすぎですよアンタは…」


そう突っ込んだのも無視して黒板の方へ歩いていく銀八。チョーク入れから白いチョークを一本取り出して右下隅の方に「日直 マヨ」と書き込むと、チョークを元に戻してパンパンと手を掃う。…マヨって。本名では書かないのかと聞きたくなったが、今はそれより聞きたいことがあったので突っ込まなかった。


「……覚えてたんですか」


変わりに、思ったことをそのまま口にした。銀八が振り返ってアンニュイな目をこちらに向ける。


「私のこと…覚えてたんですか」
「なんだよ急に」
「だって最初のとき…あんな紹介の仕方するから」
「……あー。そりゃあお前、あんなことがありゃ嫌でも覚えるだろ」
「…まァ、そうですけど……でも先生なら忘れててもおかしくないかなーと」
「確かにお前があの反応しなきゃ忘れてたかもな。まさかホントに言っちゃうなんてよー」
「先生が言わせたんじゃないですか」
「言わせてねーよ。アドバイスだよアドバイス」


あんなアドバイスあるかよ。と突っ込みかけたけど、銀八が何故か教壇から降りて一番前の机に座ったので言葉が喉の奥に引っ込んだ。懐から煙草の箱を取り出し口に一本銜えると、ライターでそれに火をつけ懐に箱とライターを戻す。…生徒の前で煙草を吸う教師ってどうよ。


「で、その後どうなのよあのストーカー男」
「…はァ、どうって」
「まだされてんの、ストーカー」
「いえ、…おかげさまでなくなりましたけど」
「マジか。根性ねーなそいつ。ストーカーの風上にもおけねーよ。近藤を見習えって言ってやりて ーぜ」


言いながら笑う。…やめさせてくれた本人がストーカー擁護するなよ。とツッコミかけたけれど、それより早く次の言葉を発する銀八。


「ま、なくなったならよかったじゃねーか」


そう言ってこちらに向けられた目が、少しだけ煌めいた気がした。心臓がとくんと高鳴る。


「…さっきと言ってること違いますけど」
「いやいや、別にストーカーの味方するわけじゃねーよ?これ以上面倒はゴメンだしなァ」
「はァ…」
「あーでも好きな女にあんなこと言われたら軽く同情くらいはするかもな」
「だから言わせたんでしょ」
「だーから言わせてねーって。っつーかお前なァ?女の子なら言葉遣いはもっと軟らかくねーと」
「…私女の子じゃないもん」
「確かに凶暴だが諦めるなって。安西先生が悲しむぞー」
「だってかわいくないし…性格だって生まれつきこんなんだもん」


どこかを間違えてこうなったわけでは決してない。私は始めからこうなるべくしてなったのだ。言葉遣いもそう、性格もそう、生まれたときからひんまがっている。


「もういっそ女に生まれたことが間違いだって思えるもん」
「………お前で間違いだったらこのクラスの女連中全員間違いだよ」


そう言って煙を吸い込んだ銀八。その目はアンニュイに伏せられていたけれど、…どうしてか、僅かに煌めいている気がした。


「っつーかお前ってそんな卑屈な奴だったのかよ」
「…これが卑屈って言うことなら、生まれたときからそうですね」
「マジか。かなり意外だわ」
「見損ないました?」
「うんにゃ」


そう言って立ち上がると、煙草を口に銜えた。開いた右手が私の頭に乗っかって、軽くポンポンと叩く。


「むしろ安心した」
「…は?」
「お前、去年まで人間らしからぬ顔して過ごしてたからよ」
「……え?」
「ま、このクラスにいたら誰でも素に戻っちまうわな。っつーわけでこれからも素丸出しで行けよ 」


そう言って私から手を離すと、ニヤッと笑って、じゃー俺会議だから、と言い残し去っていく銀八。私はその後ろ姿を、茫然と見つめていた。


……今の、どういう意味?


確かに私は去年もその前も、いい子ちゃんを演じながら生きて来たけど…このクラスじゃあいい子ちゃんぶる意味がまったくないから素丸出しだけど…なんで銀八が、それを知ってるの?だって去年までまったくと言っていいほど面識なかったのに…。教科担当でもないし、生活指導でも進路指導でもあったことないし…そりゃあ廊下ですれ違うことくらいはあったけど、話したことだってあのとき以来…


「…ッ」


なんか…すっげー嬉しいんですけど!


考えすぎ?それともあのときのこと言ってたのかな…わかんないけど、そうだったとしても銀八が私をちゃんと見ててくれたことには変わりない。


…嬉しすぎなんだけど!


なんて浮かれていると、ピンポンパンポーン、と緊急連絡特有のメロディが流れる。そして聞こえて来たのはバカ校長の声。


『えー、坂田先生、坂田先生。会議が始まりますので至急会議室まで起こしください』


言葉は丁寧だが、相当怒っているようだ。と思っていたら、同じ言葉を繰り返すバカの言葉がきゅぽん、という音と共に途切れた。


『もう来てるっつーの』
『な、何するんじゃー!余のチャームポイントをォォォ!』
『あー、さん、さーん』


いきなり聞こえた自分の名前に、反射的にスピーカーを見上げてしまう。


『先生なー、黒板消しキレイにすんの忘れたから。クリーナーかけといて。繰り返しまーす』
『繰り返さんでいいわー!』


というバカの叫びの後、ぶつんと音を立てて放送が途絶えた。…何このハチャメチャ。校内放送で頼みごとする先生始めてみた、ってか聞いたんですけど。


…でもま、いっか。


ハチャメチャで驚いたことよりも、今は喜びの方が大きかった。…だって、会議の時間に遅れてるのに話してくれてたんだし。…まァ、銀八は会議がめんどくさかっただけなんだろうけど、そうだとしても一緒にいられる時間があることは幸せなことだ。


私は上機嫌で黒板消しを手に取った。銀八がビックリするぐらいキレイにしてやろう、何てくだらないことを思いながら。









アトガキ。


とうとうやっちゃったぜ、銀八連載!なんか思ってたよりギャグになってしまった…でもラストは結構重く行きたいです。ラストに行くまではギャグが濃いかも。わかりません。全7話の予定。


ヒロインなんですが、attentionにも書きましたが「skyblueANDwhite」のヒロインと同じだと思います。…まァあのヒロインよりはもうちょっと卑屈ですけどね。今回はヒロインの卑屈さを前面に押し出そうかと思ってます。あと銀八が暴走気味になるかと思います。おま、ちょwwwwみたいなことになると思います。まー銀八なんで何でも許されます。たぶん。


そんなわけでまったり続けていきたいと思います。どうぞお付き合いください。









2008.09.28 sunday From aki mikami.