白馬が私の好きな場所に連れていくといったので、とにかくわがままを言いまくってやろうと思った。だからわざわざトロピカルランドに行きたいなんて行って、白馬がきらいそうな絶叫マシンに乗りまくって、ソフトクリームを奢らせた。白馬が疲れてきたのを見計らって更にバッティングセンターに連れていけと行って、今はその移動途中だった。


「…あ」


目に飛び込んできたのは、美術館だった。


あの美術館は、以前テレビで見たことがあった。


「…ねぇ白馬」
「はい」
「あそこにいきたい」
「え?」
「美術館」
「美術館?」


今までとのジャンルの違いに驚いているらしい。隣に座っていた白馬が私の肩越しに外をのぞいた。


「わかりました」


何とも呆気なく、次の行き先が変更された。白馬が運転手に指示を出すと、車がUターンして美術館に近づいて行く。


「…さんって、美術に興味があったんですね?」
「いや、ないよ」
「ではなぜ…」
「あの美術館さ、昔テレビに映ってたの。そのときに…」
「そのときに?」
「……まぁ、行ってから教えるよ」


今でも思い出す。あの人が去っていく後ろ姿。


別に悲劇に浸る気なんてない。そのために私は強く生きてきたんだから。…あの人の変わりに、周りを、自分を、守れるように。