白馬と一緒に歩いていると、回りの女の子の視線が痛い…。私がきょろきょろしていると、白馬は急に私の手を握った。
「なっ…!」
「デートってあなたは言いましたよね?なら手くらいつないでもいいでしょう」
「ま、周りの視線がっ…!」
「気にしないでください。むしろ見せつけてやりたいくらいですよ」
そう言って、白馬はくすくす笑った。
「なにが見せつけるよっ…!」
「こうしていれば、どこからどう見ても恋人同士です」
「私はあんたと恋人になったつもりは…!」
「なら今日一日だけ、恋人でいてください」
「っ… ………勝手にしてっ!」
「はい」
嬉しそうに笑う白馬。私は気まずくて目をそらした。
別に白馬と一緒にいて楽しくないとか、そう言うわけじゃないんだけど…
私は、基本的に女の子っぽい格好はしないから。今だってジーンズにスニーカーに、黒いセーターっていう飾りっ気のない格好をしている。
だから、白馬の隣りにいるのはつらい。
「…さん?」
私の信条なんて知らない白馬は、下から私をのぞき込んで来た。
「っ…!」
「気分でも悪いんですか?」
「違う…けど…」
「じゃあ、楽しくないですか?」
「そうじゃないけど…!」
「ならどうしたんですか」
「………」
素直に、ストレートに言うのがなんとなく恥ずかしくて、口ごもる。白馬は無言で見つめて、先を促す。
「………く、ない、ら」
「え?」
「っ、かわいくないからっ」
早口で一気に捲し立てた。白馬は面食らった顔をしている。
「…私っ、かわいい格好とか出来ないから…は、白馬とは、釣り合わないかなって…」
「そんなことを…気にしていたんですか?」
「そんなことって…!」
「なら、こちらに来てください」
自称紳士にしては荒っぽいエスコートで引っ張る白馬。一体どこに連れていくのかと思ったら行き先は意外に近く、すぐ目の前の服屋さんだった。
白馬はなんの迷いもなくなかに入ると、紳士服は素通りでいきなりレディスに直行。しかもとまったのはスカートの真ん前だ。
「服くらい、僕がプレゼントします」
「え…いいよそんなっ!」
「遠慮しないで。それに僕に釣り合うようにって考えてくれるのは嬉しいし」
「そうだけどそうじゃないっ!」
「いいからいいから。ほら、これなんかどうですか?」
そう言って差し出したのは、白いフリルのスカート。
「………無理」
「ならこれは?」
と言って、今度は黒のタイトスカートを差し出す。それならまだいいかな、と思ったのを感じ取ったらしい白馬は、今度はそれに合うように上に合わせる服を選んでいる。
その後ろ姿は楽しそうで、私はじっとそれを見つめていた。