いつものスーパーへの道を辿る途中、ふと気が向いた。だから何時もの道をそれて、すこしだけど街まで出てみることにした。それは、ただの散歩だ。何か目的があるわけじゃない。ふらふらと歩いていると、不意に。


「……?」


目の前にいきなり現れたのは、中学時代の友達だった。


「…
「よかった、やっぱりだ!違ったらどうしようかと思ったよー!」


はそう言うと、綺麗に巻いた髪を揺らして、ふわりと笑った。


中学の時はこんな格好していなかったから?イメージが変わりすぎて、わからなかったんだろうか。


「昔はジーンズしか履かなかったのにー。かわいくなったね。それにこのワンピ、すっごく可愛い!」


私の服…白いワンピースの裾をつまんで、は笑った。上に羽織ったボレロ風のカーディガンが、風に靡く。似合わないかな、と聞くと、は左右に強く首を振って否定した。


「そんなことないよ!…あ、でも…」
「で、でも?」
「髪型。もうちょっとふわっとさせた方がいくない?」
「ふわっと…」
「うん。あ、私ワックス持ってるから、やってあげるよ」


鞄から円柱の入れ物を取り出すと、蓋を取り外して、なれた手つきで白いワックスをひとすくい、それからそれを両手にすりあわせて、私の髪に触れる。


「ねぇねぇ、もしかして、デートの帰り?」
「え…?」
「だって、そんな可愛い格好してるから。あ、それともこれから行くの?」
「…いや、そういうわけじゃ…」
「えー?なんだぁ。の貴重な恋愛話が聞けると思ったのになぁ」
「残念でした。私なんかのこと好きになる人、いないよ」
「そんなこといって。実はモテモテなんでしょ?」
「何いってんの、それはのほうでしょう?私なんて…この格好を見せたい相手すらいないよ」


そう、唯一見てくれる相手は、どこかに消えてしまった。行き先も告げず、煙みたいに。


そうだ、白馬がいなきゃこんな格好に意味はない。いくら可愛く着飾っても、人の目に触れなきゃ…見て欲しい相手がいなきゃ仕方ない。


「はい、出来上がり。どう?」


そういって、は店のガラスを促した。元々重くてぺったりしていた私の髪が、ふわっとしていて、さっきより可愛くなれた気がする。でも表情は、さっきより重く沈んでいく。


「あ…ごめん、気に食わなかった?」
「や!ちがうの!ごめん…ただちょっと…」


白馬のことは、言いたくない。誰かに知られたくなんてない。でもいい嘘が見当たらなくて、私は黙りこんだ。するとは、何を勘違いしたのか、私の背中を軽く押して、大丈夫、と笑った。


は可愛いよ。元気だして!」
「……変な慰め方」
「でも、恋愛の悩みでしょ?大丈夫。女の子は恋をしてるときが一番輝いてるんだよ!」
「…恋なんてしてないよ」
「うそだー。顔見たらわかるもん」
「なんでよ…」
「女の勘」


はそう言うと、今度は強く私を押し出した。軽く振り返ると、ひらひらと手を振っている。精一杯出来る笑顔で笑って振り返したあと、思い足取りでその場を後にした。