バイトが終って外に出たら、そこには寒そうに身をちぢこめた浅葱が立っていた。どうやら萩間たちと飲みに行った帰りらしい。今日泊まりにいってもいいかと聞かれたから、いいよと答えた。


バスにゆられて5分経ったところで、隣から小さな寝息が聞こえてくる。肩に凭れてきた浅葱が、腕を組んで眠っていた。


浅葱が私以外の前で寝るなんて、なかなかない。バスでも地下鉄でも電車でも、萩間の家でも。…ほかの人が寝るまでは眠らない。だから、少し驚いた。


彼の頬の温かさが、コート越しに伝わってくる。手が私の膝近くに投げ出されていたから、軽く握って、ずり下がってしまっているメガネをとってやった。


端整な顔。細くて綺麗な指。私なんかよりよっぽど綺麗な浅葱。


…ねぇ、浅葱。私が貴方の重さを感じていると言うことは、貴方が私を必要としてくれているって、そう思ってもいいよね。私ばかりが貴方に依存しているわけじゃないって、思ってもいいよね。


さらさらの髪の毛が滑る頭に、私もゆっくりと凭れかかった。


暗くなった空から、ひらりと白いものが舞い落ちた。









2007.02.20 tuesday From aki mikami.