私は彼の本当の名前を知らない。超能力者なんだから、知れるわけがない。けど、そんなことが問題じゃないんだ。だって私達は、どっちみちお互い、色々隠さなければいけない立場なんだから。
「L…触っても良い?」
「何に…?」
「貴方に」
「…どうぞ」
そうLが言ったので、私はそっと右手を伸ばす。…ひんやりとした温度が気持ち良い。
「…冷たい」
「貴方の手は、温かいですね」
「…そう」
適当に答えてソファに座る。Lは今までいつもの座り方で革張りの椅子に座っていたのを立ち上がって、わざわざ私の隣に座った。
「…休憩?」
「まぁ…そんなところです」
「めずらし」
でれん、とソファにより掛かるL。やがて首を左右に動かしたり、手をしきりに動かしたり、足をばたつかせたり落ち着きの無い様子を見せて、最終的には私をじっと見据えた。
「…何?」
「……は、私が好きなんですか?」
「………さぁ」
とぼけた顔をした私に、Lは口を尖らせた。…好きに決まってるでしょ。貴方ほどの人なら簡単にわかるじゃない。…でも、Lはその手には鈍いのかもしれない。
「…Lの馬鹿」
「に言われると、ショックですね」
変化の乏しい表情を見ていると、本当か?と思う。とにかく私は間の抜けたようなLに、苦笑して見せるしかなかった。
「…」
「ん…?」
「おなか、すきました」
唐突に言ったLに、私は正直呆れた。せっかくLの方から恋の話なんて持ちかけてくれたのに。…結局は、花より団子か。
「…何がいい?」
仕方なしに立ち上がる。すると、突然Lに右手を引っ張られ、ソファに座りこんだところに上から覆い被さられた。
「…が良い」
「―――ばかっ」
降って来る口付けに身を任せた。両想い、何て大それた物でも無いけれど、さっきまで冷たかったLの頬はほんのり温かかった。
2006.02.17 friday From aki mikami.
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