ー…」


いきなりLが抱き付いてきたからつい条件反射で引き剥がしたら、Lが「今日だけは……!」なんてわけのわからないことを言ってまた抱き付いて(ダイブして)きた。…まったく、何が今日だけは、だ。毎日毎日ベタベタしてるくせに。


「私今忙しいんだけど?」
「分かっていますが今日だけは私の方だけ見ててください」
「…そんな空恐ろしいことできません」
「どうしてっ!私はこんなにも、をっ…!」
「はいはい、わかったから。私もLのこと愛してますよー」
「だったらいいじゃないですか……」
「や、無理」
「ひど……」


ずーん、と言う効果音が似合いそうだ。部屋の端の方で膝を抱えているLは、なんだか本当に影が落ちているように見える。


「……L…」
「………」


……シカトかよ。


「ちょっとL」
「…………なんですか」


うわっ…ふて腐れた声。


「そんなことくらいでへそ曲げないでよ」
「だってが構ってくれないから…」
「構う構うって、具体的にはなにがしたいわけ…?」
「えー?一緒にご飯食べたり、一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たり……べたべたしたり…?」
「や、いつもしてるし」
「今日だけは特別なんです……お願いします」


なんだかLの目、いつになく真剣なんだけど?…まぁガキっぽいのはいつもどおりなんだけども。


「……まぁ、要するに一日Lに従えってことでしょ」
「………まぁ」
「…なんか特別な日なの?」
「……」


答えない。ってことは自分で考えろってことか?…あぁもう、面倒臭い。


「…今日はハロウィン」
「関係ないです」
「お祝いしたい気分?クリスマスは随分先よ?」
「わかっていますよ。大体、記念日と言えば最初に出て来るはずのものがどうして出てこないんですかっ!」
「き、ねん、日…?」


記念日。結婚…いや、私たち結婚してないから。じゃあなに?………もしかして…
「たん…


続きは、Lに飲み込まれてしまった。重なった唇が、今日はやけに強引だ。


「……、今日は一日、べたべたしませんか?」
「………まぁ、半日くらいなら」


Lは、あからさまに喜んで見せた。そんな喜ばなくても…と思った言葉は敢えて飲み込んだ。…珍しく、Lが笑っているから。


―――おめでとう、L。


そう心だけで呟いたら、耳元でありがとうとかえされた。これから私とLの、甘い(ようでいて多分甘くない)、二人きりの時間が始まる。


(HAPPY BIRTHDAY L!!)









2006.10.31 tuesday From aki mikami.