夜神ライトが広げているアダルト雑誌…いや、素直にエロ本と言ったほうがいいだろうか。それは彼が持つととても異常なものに見えてしまう。
あまりにも似合わないのだ。
笑えない冗談だと思ってしまう。


そしてふとした瞬間、私はLと夜神ライトを置き換えてしまった。すぐにその想像に激しく嫌悪する。


…やたら似合う。


そう思うことが失礼だとわかっていても、一度強く頭に焼き付いた思いはなかなか離れない。


…嗚呼、男って狼なのね。


「…さん?」
「っ、はいぃいぃ!!」
「どうしたんですか、ぼーっとしちゃって」


ん、と首を傾げた松田さんが隣りの部屋からこちらを見ていた。


「な…なんでもないです」
「そうですか?さっきから呼んでるのに全然返事ないから…」
「あ…はは…ごめんなさい」
「いいえ。あの、これさっき受け取ったレイ・ペンバーの資料なんですけど、Lに返しといてください」
「はい、わかりました」


松田さんから資料を受け取った。彼は私に軽くウインクをして向こうの部屋へ帰っていく。


やれやれだ。

私は一つのことを考えると他のことが見えなくなってしまうのでこんなやりとりはよくあるのだが、それにしても今のはまずかった。


…だってLが一瞬訝しげにこちらを見たから。


妙な危機感に襲われながら私は逃れるように仕事に取り掛かった。




◇ ◆




カメラを取り外すとLが言った瞬間の夜神局長は、本当に心底安心した、…そんな表情だった。そして私は見逃さなかった、Lがまるで"この時を待っていた"とでも言いたげに、ふ、と鼻で笑ったのを。


思わずぞくりとした。


「水木さん」
「は…はいっ…」
「話があります」
「………はい」


なんか、怖い。そして嫌な予感がする。久々の悪寒だ。


私はずるずる引き摺られて、隣りの部屋へ押し込まれた。

…」
「…はぃ」
「何を考えていたんですか?」
「な…んの…ことでしょうか…?」
「とぼけないでください」


部屋の中央にあるソファにいつもの座り方をし、ぎょろりと大きい目でこちらを見据えてくる。
一方私はというと、彼に強引に隣りに座らされ、動こうにも動けない状態である。


「…とぼけてないよ?」
「かわいく言ってもだめです。あの時…私が『17歳と言う年齢から考えれば普通です』と言った瞬間、あなたが向けたあの不審な瞳はなんだったんですか」
「う…は…はぁ…えっと…」「隠してもいいことはない、と言っておきます」
「…むぅ」
「拗ねてもだめです。…まぁ大体わかっていますが」
「じ…じゃあ当ててみてよ」
「アダルト誌を読んでいる19歳の私を想像したんでしょう」
「っ…」


当ててみて、なんて言うんじゃなかった。動揺で声も出ない。


「…図星のようですね」
「ごめんなさい」
「……謝るところが違いますよ?」
「えっ…!!」


じろ、と視線を向けられる。…あぁそうですか。つまり全部ばれてると。


「…似合うとか思ってごめんなさい」
「よく出来ました」


ぽんぽん、と頭を撫でてくるL。

…予想していた反応がないと言うのも、それはそれで動揺するものだ。


「え…L?」
「なんですか」
「なんですかって…それで終わり…?」
「…もっと何かして欲しいんですか?」
「そんなことは絶対ないけどっ!!」


親指をくわえ、私と目を合わせて一考。…やがてにや、と笑う。


「…なら遠慮なく…お仕置します」
「しなくていいから…!!」
「いいえ。はしてほしそうですから」
「してほしくないです…!激しく拒否!」
「拒否しても無駄です」


そう言ってLは私をその場に押し倒すと、額に口付けて小さく笑った。


…その笑顔って、反則だと思うんだけど。


まぁ、エロ本が似合うLでもいいかな。


そう思ってしまったのは秘密…にしたいけど、きっと彼にはバレバレなんだろうな。


Lの優しい温もりに触れながら、そんなことを思った。









2006.12.08 friday From aki mikami.