捜査本部の机の上に堂々置かれているチョコレートケーキは、ワタリさんが買って来てくれたらしい。


クリスマスまで捜査にあたる私たちへの気遣いらしいのだが、そうだと気付いていない人間が一人。


「…竜崎」


一人で全部食べそうな勢いなんですけど…!


「どうかしましたかさん」
「あなた…そのケーキ全部食べる気ですか?」
「はい。頭を使うと甘い物が欲しくなります」
「………今日何の日か知ってますか…?」
「はい12月、25日です」
「………………それはいつもいつもあんたの暴挙に付き合わされて気苦労が絶えない私たちのためにワタリさんが買ってきてくださったものです!」
「おやキレましたねさん」


くす、と笑う竜崎がムカツク。夜神局長はどうやら呆れて出て行ったらしい。…いつのまにか二人きりだ。


「たべますか」
「食べるに決まってるじゃないですか!」
「…ならこちらにどうぞ」


ちょいちょい、と手招かれたのは、丁度竜崎の目の前。


…近すぎる、気がする。


「えっと…」
「ほらどうぞ」
「あの…」
「………早くしてください」


と言っておきながら竜崎は私の腕を引っ張って無理やりそこに座らせた。…意外と力あるんだな、って感心したのは秘密だ。


竜崎はその細い指でスプーンをもち、ケーキをひと掬いして私の口に持ってきた。…私はためらいながらも、そのままケーキを口に含んだ。


…疲れた体に染みていく、甘い味。


「…おいしい」
「そうですね」
「頭使うと甘い物が欲しくなるって…本当ですね」
「…………さん」


そう私を呼んだ声が別人みたいで、思わず振り返った。…それがいけなかった。


「…っ!!」


いきなりの、深いキス。


重なった竜崎の口から伸びるざらついた舌は、私の口内を堪能している。
せせら笑いが聞こえてきそうなほど、私はぎりぎりまで追い詰められていた。


…息の苦しさでも、恥ずかしさでも。


ようやく唇が開放されて、私は肩を上下させた。
竜崎はにっこり笑っている。…私なんて喋る余裕もないのに………


「素敵なクリスマスプレゼントですありがとうございます」
「な、にっ…がっ…!」
「甘いキスでした。…好きです」
「っ!!!!!!」


あんた、告白のタイミングおかしいって!とツッコミたかったけど、竜崎のにんまり顔をみていたら言い返せなくなった。


…私だって。


「私、…も」
「知っています」
「っ…!」
「あなたは分かりやすいです」
「………」


嬉しくない…ってかわかっていたけど竜崎に言われると悲しい…。


…でもまぁ、いいんだ。


実はクリスマスはまだまだながいんだから。


ずっと好きだった貴方と、一日堂々とイチャイチャ出来るんだから。


…キラは待ってくれない、だけど。


「愛しています、


そう言ってくれる貴方の言葉を、ずっと聞いていたいじゃない。


雪のふる、聖なる夜に。









2006.12.25 monday From aki mikami.