『…今日外に出ました』
私が電話に出るなりそう言った。
相変わらず抑揚がなくて感情が掴みにくい。
「そう、珍しいわね。…で、何かあったの?」
Lが電話をかけるということは、私に思わず報告したくなるような、そんな嬉しいこと(もしくは嫌なこと)があったということだ。
普段滅多なことでは電話してこないから、余程のことなのだろう。
『…あなたを拾いました』
「…………はぁ?」
まったくわけがわからなかった。私を拾った?どう考えても私はここにいるのに。
「…意味不明…分かりやすく、20字以上25字以内で説明せよ」
『あなたにそっくりな目をした黒い猫を拾いました』
「…あぁ、そう言うこと」
つまりはあの時の私への仕返しだと。
私が連れて帰った"L"は、本物のLに懐かなかった。おまけにLは自分と"L"が似ているのを否定し、思い切りいやがった。
…だからそんなところもそっくりだってば。
そういつも思っていたのは秘密だ。
『今すぐ帰って来てくださいすぐに、お見せしたい』
「はいはい。今から帰るから待ってて」
『………やはりそっくりです』
「…は?どこが?」
『いつも黒いところや、冷静な瞳や、淡泊な態度…とにかくすべてです』
くす、と笑われた。あぁ、なんだか馬鹿にされているみたいで腹がたつ…
でも、きっと私ならわたしのかけらともうまくやっていける気がする。
…根拠はないけれど。
後日、
ファッション雑誌を見る私のとなりで真剣に中をのぞく"わたし"と、
ケーキを巡って取っ組み合いをしているダブルLの姿があったのは、私とワタリしか知らないこと。
2006.12.27 wednesday From aki mikami.
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