微裏?



乾いた太陽の匂いで目が覚めた。


頭がぼんやりしている。


元々朝は苦手な方だが、昨日遅くまでチェスをしていたから、尚更疲れているのだろう。


勝負は私の完敗だった。
大体ルール自体を最近知ったくらいなのに、とても勝てるはずがない。


寝癖を整え起き上がった私は、パジャマを着替えてモニタールームへ入った。


相変わらず丸まった背中がそこにあって、ほっと安心してしまう。


日本警察と合流することを決めた…そう伝えられてから、私はずっと不安だった。
私とワタリ意外にLとして素顔を晒したことはない…そんな彼が、直接捜査本部の指揮をとる。


つまり、キラを捕まえる機会が増えると同時にLが殺される確率も増えるということ。


…だから、私は反対だった。


けど、彼が私に話したということは、彼の中で決定したことだと…そう言うことだろう。


Lは私に相談をすることはない。
いつも、決定したことを淡々と告げるのみだ。


それが寂しくないと言えば嘘になるが、Lは私が何か言ったところでスタイルを変えるような人ではない。


「おはよう、L」
「おはようございます


目はモニターに向いたままだ。


私は彼を横目に見ながら窓を開けた。


朝日が丁度目の前にある。


眺めているだけで、こんなに穏やかな気持ちになっていく。思わず笑みが零れた。


「…何がそんなに面白いんですか」


すと、と椅子から飛び降り隣りに並んだLは、心なしか拗ねたようにこちらをのぞき込んだ。


「私と話すより楽しいことですか」
「別にー?」
「…それとも私を笑いましたか」
「決してそんなことはありませんよー?」
「……」


む、と口を尖らせたLは、ごす、と私の胸から腹あたりにむかって頭突きを食らわせた。ぱさぱさした髪の毛がくすぐったい。


「……貴方は怒らないんですね」
「え?」
「私が捜査本部と合流することに」
「あぁ…まぁ、怒ってもどうにもならないし」
「…」


じ、と視線を向けて来る。どこか不満そうで、私は思わず彼の頭を撫でた。まるで犬のように目を細めたLは、私に縋るように抱き付いて来る。


「…
「なに?」
「…しましょう」
「……私今起きたとこ」
「心配いりません私は、3時から起きてます」
「そう言う問題じゃ…」
「明日から、貴方の出入りを禁じます」


少し冷たい、感情のない声でそう言われた。水の底に沈んでいくような感覚に囚われる。


「………わかった」


予感。


もう会えない予感。


Lは私を窓際の壁に押しつけた。ボタンを外されると、下着をつけてない胸が現れる。


冷たい朝の風が、少し寒い。


一度、そっとキスをして、彼の冷たい指が体を滑った。









2006.12.30 saturday From aki mikami.