(微裏)


Lの指が、私の胸を包んだ。


灯の消えた室内に響くのは、Lの荒い息遣いと、私の喘ぎと、繋がった水音だけ



二人とも、何も喋らない。まるで喋ってはいけないように。


ただLを感じている…それ以外のことは、頭から消え去っていた。


一層激しく打ち付けられると、白い波が一気に迫って来る。


弱いところばかり狙う彼にもどうやら余裕がないらしく、小さく声が漏れた。


その声が、私を絶頂へと導いていく。頭が掻き乱されていくような感覚のあと、白い波に飲み込まれた。


私の締め付けに、Lも私の中に精を吐き出す。


初めて彼を受け止めた感覚で震える私を庇うように、Lはきつく肩を抱いた。


「え…る…?」


互いの息がかかるほど近く顔を寄せあう。




…今日のLは、おかしい。




「…どうしたの、L」


中に出すなんて、今までなかったのに。生でするなんて、今までなかったのに。


でも、そのおかしさをおかしいと、口にすることが出来なかった。


言葉にのせれば、Lはきっと…消えてしまうから。


「………………」


掠れた甘い声で、私を呼んだ。未だ差し込まれたままのLが、私のなかで再び大きくなっていく。


「…もう一度、しましょう…もう一度」


私の返事を待つことなく、再びLが動き出す。


「あっ…ん、えるっ………!」
…」


耳元に熱い息がかかる。
私だけを求めて来る彼の動きが、落ち着きかけていた波を再び荒くたてていく。


「んっ……っ!」


どうして?


…頬を 涙が 伝った


「…………?」


最中に泣くなんて、どうかしてる。


だって私の涙は、生理的な涙じゃない。…自分でわかる。


Lが 怖い。


「…………ッ」
「っ…やっ…」
「なぜいやがるんです!」
「だっ…だって…」
「…私のことが嫌いですか」
「ちが、う…けどっ…」


違う。


嫌いになったんじゃない。


…だからこそ、怖いの。


「…………ッ…わかりました」


突然そう言って動きを止めた。…今にも泣きそうな表情をしている。


「……L?」
「もう…いいです」
「な…に…?」
「………こんな行為に意味はない…もうやめましょう」


Lの温もりが離れていく。…まるでもう会えないみたいで、…不安とか恐怖とか寂しさとか、たくさんの感情が溢れる。


「…ない、…よ」
「………え?」
「…………意味わかんないよ…!!」
…」
「勝手だよ…いつもいつも!私にも分かるように説明して!勝手に…いなくなったりしないで………!」
「…………


Lの手が伸びて来る。私はそれを拒んで布団に潜った。


自分でも何を言っているのかわけが分からなくて、どうしていいのか分からなくて、頭がぐちゃぐちゃになっていく。


「……怖い、…んだと、思います」
「え…?」
「……日本の捜査本部と、合流します」
「え……?」
「死ぬかもしれないと思ったら……」
「怖い、の…?」


布団越しに聞こえるLの掠れた声が、小さくはい、と答えた。


―――やっとわかった


私は、Lが怖かったんじゃない。


Lが離れていくのが、怖かったんだ。


今日のLは、消えてしまいそうで。


布団から飛び出して、Lに抱き付いた。


「……
「ばか…」
「……はい」
「私も…怖いよ」

「怖い…けど、………信じてるから…Lなら、死なないって」


私を置いていったりしないって。


「…ねぇ、もう一回しよ?」
「ですが…」
「いいから…して?」
「………はい」


二人でベッドに横になる。Lの温度が伝わってくる。


…大丈夫、ちゃんとここにいる。


私の体を滑る、Lの指。


湿った月の匂いに、目を閉じた。









2006.12.30 saturday From aki mikami.