「見てわからないか?」
「わかりますよぉーまったく国光くんは冷たいですねぇー」
「この荷物をみて尚俺を茶化すお前は冷たくないのか…?」
「だってあたし、箸より重いもの持てないし〜」
「嘘を言うな。剣道部部長で、去年の秋の全国、個人戦優勝者が」
「いやぁ〜、ほら、竹刀って意外と軽いし!」
「そうか…あくまで無視だな?」
「冗談だって!ちょっとからかっただけ!許して手塚っ」
「……まったく。俺をからかうなんて、お前くらいだぞ」
「まぁそうでしょうねぇ、あんた怖いし。まぁ、親密ってことで…いいんじゃん?」
「なにが親密だ。本当にそうなら手伝え」
「はいはい、半分でも全部でも持ちますよーだ」


そう言って俺からすべての書類を取り上げた。


「別にすべてもつ必要は…
「何言ってんの、まだあるんでしょ?そっち持ってきなって!」


そう言って、は俺から取り上げた書類を持ってスタスタと生徒会室に向う。その後ろ姿を眺めていたら、自然と顔が緩んだ。


彼女は1年の時に、俺に告白して来た。だが、俺はそのときのことを知らなくて、断った。大抵の女子はそれから話もしないが、は違った。彼女は話さなくなる所か、積極的に話しかけて来た。そうして結局、俺たちはお互いに親友、と呼べるまでになった。

それはもちろん、俺から話しかけたわけではない。俺はどちらかと言うと、そう言うのは苦手だし、いつもしていないのに、にだけそうするのはおかしいから。…というか、ふった相手に話しかけるなんてことは、思い付かなかったのだ。そんな俺に、は告白の翌日、こう言った。


『あたし、手塚の友達になる!それなら別にいいでしょ?』


その言葉を、あえて断る理由はなかった。のことはよく知らなかったが、知り合えば仲良くなれるかもしれない。


そして現実、こうして親友になった。あのころのことはお互いに口に出さないが、もうそのことを気にしている風ではないし、俺自身、気にしてはいない。


「手塚、早くしろっての!」
「あぁ」


答えると、鼻唄を唄いながら歩いて行く。あいつが明るいやつで、良かったと思
う。


彼女がいる生活が、当たり前になっている。