翌日。 俺はに謝ろうと思って、3―4まで行った。ひどい言い方をしたつもりはなかったが、気に触ったのは事実だ。それに…のことが、ずっと頭から離れなかったのだ。 「…あれ、手塚?」 最初に俺に気付いたのは、河村だった。 「やぁ、何かあったのかい?」 「いや……はいるか」 「?あぁ、なら今、先生の所に行ったよ。ノート提出するって」 「職員室か…ならまた次の時間… 「あんれぇ?手塚じゃーん!」 聞き慣れた声に、飛びあがる。振り返るとそこには、がいつもの笑顔を浮かべて立っていた。 「…」 なぜか、緊張してしまう。昨日のあの顔が、頭を過ぎ去っていく。 「その…昨日はご 「昨日はごめんねぇ、なんか怒っちゃって!」 「…え?」 「何か腹立っちゃってさ。でも、もう怒ってないし、反省してます。ごめんね?」 「え…あ、あぁ。その…」 「許してくれないの?」 「そういうわけでは…」 「そう、よかった!」 満面の笑みを浮かべて、は言った。…俺が謝るはずだったのに、どうしてが謝っているんだろう。 「じゃあさ、手塚。今日なんか仕事手伝うよ。…昨日の終ったの?」 「いや…あと半分ほど」 「したら、また今日の昼休み手伝いに行ってあげる!んじゃあね!」 は先で待っている友人の所に歩いていった。…一体なにが起きているのか、わからない。 「手塚…を怒らせたんだ?」 「あぁ…まぁな」 「珍しいね、が怒るなんて」 「あぁ…」 「何言ったの?」 「……冗談半分で、お前の言葉はどこまで本気かわからないと言った」 「それは…言っちゃいけない言葉だったかもね」 「え…?」 「ほら、あのこと思い出したんだよ、」 あのこと、と言う言葉の中身が、思いつかなかった。最も今思いつくなら、昨日一番悩んだりはしないが。 「ほら…が手塚に告白した時…あれのことだろ。手塚はもう忘れたかもしれないけど。…でもは今でも手塚のこと、好きなんだよな」 「え?」 「だって、やっぱりちょっと違うよ。皆と話すと、手塚と話す」 「…!」 「基本は変わってないように見えるけど…目が違うよ。てっきり、手塚もを好きなんだと思ってたけど…」 「…どうしてそう思う」 「いや、何か手塚も、随分のこと優しくみているから」 「…そう、なのか」 「まぁ、俺が勝手にそう思うだけだけど」 自分では、河村の言うような気持ちを持っているつもりはない。それに、も…未だに俺を好きでいるなんてこと、ありえるだろうか。俺はあれから、だけを贔屓したりせず、平等に、他人と変わらず接してきた。もちろんの方もそうだ。そしてなによりわからないのは、もしが未だに俺のことを好きで、…あんなにひどいことを言ったのに、どうしてあいつは笑っていられるのだろうか。笑って俺にごめんと謝れるのだろうか。都合よく取ると、俺にそこまでして嫌われたくないから、だろうか。だが、がそんなことを考えているなんて…思えない。 河村に礼を言って、俺は4組を後にした。…もうこれ以上、のことは考えられない。混乱で、頭が可笑しくなりそうだ。 ●●●●● |