「河村…少しいいか?」
「ん?どうしたんだい、手塚」




振りかえった河村が不思議そうな顔をした。


「聞きたい事がある」
「…聞きたい事?」
「…の事だ」


そう言った俺に、河村は更に疑問を持ったようだ。確かに、の事を河村に聞くのはおかしいかもしれない。だが、まさか、直接本人に聞くわけにもいかない。


「…が、どうしたの?」
「……は…本当に俺の事を、まだ好きでいるのか」
「え?」
「どうなんだ」
「ま、まぁ…俺が見た感じではね」
「そうか。…では、どうしては…俺の事を好きになってくれたんだ」
「えぇ?」


驚いている河村。当然だ。そんなこと知るか、と、俺が河村の立場でも思う。だが、俺も他に頼れる人間がいなくて、困っているのだ。以外の女友達なんて、ほぼいないに等しい。


「…手塚、ちょっと考えて見たんだね」
「ちょっと、じゃないぞ」
「はは、そっか。じゃあ、俺も真剣に答えるけど…は、手塚に助けて貰ったって言ってたよ」
「助けた…?」
「覚えてないかもしれないけど、そう言う事があったって言ってた。本人に聞いてみるといいかもね」
「本人に聞くなんて、失礼ではないのか」
「失礼かもしれないけど…ずっと聞かないで、変な態度を取るより、気になることは聞いてみて、すっきりしたほうがいいってこともあるから」


そう言った河村がベンチに置いてあるラケットを取ると、いつも通りバーニング状態がやってくる。それを横目にみながらフェンスの向こうを見やると…と、の友人がどこかに向かって歩いて行く姿。俺はすぐに立ち上がって、その後ろ姿を追いかけた。去り際に河村が、手塚ファイト、と声を掛けたので、俺は軽く手を上げて走り出した。