「手塚だ、おっはよぉ!」


かけられた声に、俺はまた驚いてしまった。だが、本人にはどうやらばれなかったらしく、は俺に小さく笑顔をみせた後、よっ、と言った。


「…おはよう」
「どうしたの、ぼーっとして??」
「あれぇ?先輩と部長じゃないッスか!!」


そう言って俺たちを振り向かせたのは、なぜか桃城だった。


「おっ、桃おはよ!」
「おはようございます先輩!手塚部長も!って部長にはさっきいいましたね」
「あ…あぁ」


そんなふうに返すのが精一杯だった。大体なぜのことを、桃城が知っている?


「なにそんな驚いてんのよ。悪いけどあたし、桃とは2年の時から知り合いだからね」
「そうっすよ!ずっとうちの部みに来てくれてましたから!可愛いなって目ぇつけてたんス」
「ばか言ってんじゃないの!ただあんたが華麗なロブあげて無くしかけたボール拾ってあげただけでしょ?」
「まぁ、そうともいうっすね!」


目の前でこの二人が繰り広げる会話が、まるでノイズでもかかったかのように聞こえづらい。

…頭を打たれたような衝撃だった。別にただ、後輩と親友が、知り合いだっただけなのに。…俺の知らないがいるんだと、思い知らされた。


「……手塚…?」


が不思議そうに俺の顔をのぞき込んで来る。


「なした?さっきからなんか変だよ?」
「……いや、そんなことは」
「あぁ〜!さてはちゃんと桃くんがあんまり仲いいんで、ヤキモチ焼いちゃったかなぁ〜?」
「……っ!ヤキモチなど焼いていない!!」


思わずそう叫んでしまった。も桃城も、不思議そうな顔をするのがわかる。


俺はたまらず、その場から立ち去った。…ヤキモチ、という言葉に、少しでも反応してしまったから。


―――…そうかもしれないと、思ったから。