あれから極力、一人ではいないようにしている。一人でいると、がやって来るからだ。…それから、少しほかの女子とも話をするようになった。と同様とは行かないが、会話を盛り上げる努力をしてくれる。


それでもは、俺のところに来た。


明らかに一緒にいたくない態度をとっているのに、いつもと何ら変わらず、笑顔だ。


…どうして笑顔でいられる?


そう考えると、腹がたった。


そして今、俺はそれ以上に腹がたっている。


それは、桃城と今話している人物が、テニス部をのぞきに来たらしいだからだ。…いつもなら何とも思わないが、今は別だ。…俺から離れてほしい。…しかも、なぜここまで来て、桃城とそんなに笑顔で話せる?


俺と話さない事は、にとって何ら負担ではない、という事か。


「…手塚?」
「…」
「……手塚っ」


突然肩を叩かれた、そのわずかな衝撃で、我にかえる。振り返るとそこには、不二がいた。


「ふ…じ…?」
「手塚がぼんやりしてるなんて、珍しいね」
「すまない…」
「別に大丈夫だけど…どうかした?…さんと桃を見てたみたいだけど」
「っ、」
「それに…凄く苛々してるね。何かあったの?」
「! 別に、何もない!」


思わず叫んでしまった。不二が驚いた表情を見せる。それに、周りにいた部員も俺の方を振り返り、打球をかえす音が一気にやんで、静かになった。…先ほどまで聞こえていたと桃城の笑い声も、ぱったりとやんでしまう。


「っ…大石、後を頼む」


俺は、もう前を向くことが出来なかった。視線が痛かった。…の事で、こんなに心をかき乱されるなんて。


…これでは、部長失格だ。