次の日。

月曜日の朝。今日は早朝練習がない日だった。だから、いつもよりすこし遅く家を出る。すると、家の前に人影が見えて…それが女子生徒だとわかった瞬間に、であることを確信して、心臓が跳ねた。


「あ…国光、おはよ」


そう言って、は笑った。…3年前は朝が苦手で、寝起きはいつもぼんやりしていたのに、今そこにたっているはそんな素振りを少しも見せないで、髪の毛を綺麗に整えて、…前の学校の制服なのだろう、ブレザーのリボンは少しの傾きもない。


「あの、私今日始めてだから…一緒に行ってもらっても、いいかな」
「あ…あぁ」


断る理由なんてなかった。だが、…すこし気まずい。何を話せばいいのだろうか。


なぜか俺は、のことを名前で呼べなくなっていた。3年前は、ちゃんとと呼べていたのに…今は、なぜか""と、苗字で呼んでしまう。の方は名前で呼んでくれているから、どこか失礼な気がするが、どうしてか呼ぶことが出来なかった。


だが、はそれに触れて来ない。もしかしたら俺が何て呼んでいたかなど、忘れてしまったのかもしれない。


「国光って今日、朝練ないの?」
「あぁ…今日は休みだ」
「そうなの…じゃあ、明日からは一緒にいけないんだね?」
「明日は7時から、ちゃんとやるからな」
「そっか。それならちゃんと行き方覚えないとね?」
「…大丈夫か?お前は昔から方向音痴だったからな」
「あーら、もうそれは克服したんだからね?」
「本当か?」
「本当よ?街にも一人で行けるはず!」
「…随分曖昧な答えだな?」
「……う、だって自信はあんまり…」


む、と頬を膨らませて微笑む。その様子だけを見ていると、本当に3年前と何も変わらない。…だが、やはり3年という時間は、大きい。


学校につくまでの時間、俺はずっと隣を気にしていた。