「6回…」
「え?」
「今日お前がを見た回数と、その後にため息をついた回数だ」


唐突に俺の目の前にやってきてそう言った乾は、ふふふ、と怪しく笑った。


「おいおい乾、それじゃあ話が逸れるじゃないか」
「あぁ、…すまない。で、何の話だったか」
「だから、最近の手塚がおかしいって言う話だよ」
「え…?」
「あ、ごめん!気に触ったんなら謝るよ。ただ、が来てからあまり元気が無いようだから、けんかでもしたのかと思って」


大石があたりを気にしながらそう言った。今は休憩時間で、さっきまでタオルを私に来たがそばにいたから、気にしているのだろう。


「…別に、喧嘩したわけじゃない」
「でも、やっぱりなんかのこと気にしてるよな?家が近いって言うし、幼馴染なんだろ?だから、部活以外で何かあったのかと思ったんだ」
「…本当に、なにもない」
「そうか?ならいいんだが…」
「手塚…そうか、お前はが嫌いなのか?」
「っ!そんなことはっ…!」


思わず、乾の言葉に叫び出していた。俺が…を嫌い?そんなことはない。ただ、3年と言う時間が俺たちの間に少しだけ壁を作っているだけだ。


「そ、そうか?…だが、そうみえたな」
「っ、」
「お、俺も…正直、そう見えるときもあったかも」
「……」


自分では、そんなつもりはなかった。俺はただと話すのに、ほんの少し躊躇いを感じているだけ。


だが、周りからしてみれば…からしてみれば、嫌われているように見えたのかもしれない。


そんな誤解をされたまま、部活を続けるわけには行かない。


「…ありがとう、気をつける」


俺は、それだけ言ってその場を後にした。