誰と誰が付き合っているとか、誰が誰を好きだとか、…はっきりいってそんなこと、俺にとってはどうでもいい。好きな人がいなかったわけではないが、どちらかと言うとそう言う恋愛事は面倒臭く感じてしまう方だ。


…だからだろうか、は俺にだけは絶対に恋愛の話をふらない。まぁまともな返答が返せないのだから、ふってもふられてもどうしようもないのだが。


しかし、それを面白くなく感じる俺も確かにいる。矛盾しているとわかっているが、わかっているだけでどうにか出来るわけではないし、出来たらしている。


そして今…俺はと海堂が二人きりで話している部室の前にいる。


持ち上がり式で試験がない分、暇なときは体を動かしに来ているのだが、まさか密会を目撃してしまうとは。


そしてまさか話の内容まで聞いてしまうとは。


『…ってことで…あんたにも協力して欲しいの』
『そ…そりゃまぁ…先輩の頼みなら』
『よっしゃ!じゃあ今すぐ行こう!』
『い、今からっすか…!?』
『善は急げって言うじゃない』
『…………急がば回れとも言います』
『口答えしない!いいじゃない?夜に二人でいたら露骨にデートだけど、今なら帰り道一緒だったで言い訳出来るでしょ?』
『でっ…デートって…!』
『噂たてられるのはいや、でしょ?』
『………』


デート?


と、海堂が。


ドアノブが小さく音をたてたので、俺は反射的に身を隠した。


『薫!ほら行くよ!』
『はい……』


開いた扉の向こうから出て来たと、気が進まない様子の…いや、実は何だかんだ言って嬉しそうな海堂が出て来た。


は性格こそ活発で男っぽいところもあるが、外見はしっかり女の子、それもかなり綺麗だ。凛とした姿に一度は憧れると、皆口を揃えて言う。


…恋愛にうとい俺からみて綺麗だと思うのだから、間違いないだろう。


怒りの、と言うあだ名は乾と桃城がふざけてつけた。…その前までは椿姫、と密かに呼ばれていた。


椿の花のように艶やかで、いつも凛としているから。


…今こんなことを考えて、なんだと言うのだろうか。二人は既に歩き出して遠く離れている。


どんな事情だ?買い物に付き合わせる…だけなのか?


それとも付き合って…いるのか?


こんな時、苛立つ俺は最低だと思う。


友達だったら、付き合っているとかいないとか、誰が好きとか嫌いとか、教えてくれてもいいのに、とか


…大体お前が好きなのは俺だろうとか


そんなことを考えてしまう俺は、きっと最低だ。