エレベーターで20階まで上がり非常階段に出ると、そこから先の屋上への扉は鍵がけられていた。予想してたことだったので、やっぱりなと言おうとしたが、オレが言葉を発する前にはドアノブに足をかけて、格子状のドアの上の方にぽっかり開いている隙間から向こう側へと飛び降りた。


「っ、おい!」
「いーから。ほら、開いたよ」


向こう側から鍵を開けて、いたずらっぽく笑う。今日だけだから、と言ったが、その割には手馴れてなかったか?そうききかけたが、が歩き出したので黙ってついていくことにした。


階段を登る。少しずつ空気が冷たくなっていく。オレはの隣に並んでそっと手を握った。一瞬視線を感じたが、すぐに微笑んで前に向き直る。


ひらりと、冷たいものが頬にあたった。


「……うわぁっ…!」


の目が、爛々と輝いた。


「手塚、雪だよ、雪!」


空を見上げると、濃紺の空からひらり、ひらりと、大粒の雪が舞い降りていた。柵ごしに見える東京の景色に、ゆっくりと降り注いでいる。


「…あのね、私…前に言ったでしょ、クリスマスには天使が出るって」
「あぁ、言ってたな」
「その話には続きがあってね。…好きな人と一緒に天使が見られると、―――両想いになれるんだって」


反射的にを振り返った。…その横顔は恥ずかしそうに、少し微笑んでいる。


「だから、どうしても今日…国光と一緒にいたかったんだ」


まっすぐな瞳がオレを射抜いた瞬間、次の言葉がわかった。薄く色づいた唇が、ゆっくりと開く。


「私、国光が…


オレはの言葉をさえぎってキスをした。ゆっくりと唇を離して、真っ赤になるを見ると、思わず笑みがもれる。


「そういうのは…オレに言わせてくれないか」


オレの言葉に、は少しうつむいて、ゆっくりと頷いた。


ずっといおうと思っていた言葉。伝えようと思っていた言葉。


「…好きだ」


力任せにを抱きしめる。ずっといえなくてごめん、そうつぶやくと、震える声でが、こっちこそ、といったのが聞こえた。


「…なぜがあやまる?」
「だって…いっぱい困らせたから」
「そうか?」
「そうだよ」
「…たぶん、お互い様だと思うぞ」
「そう?」
「そうだ」


きょとんとしたがふきだすのと、オレが思わず笑い出すのとは、ほぼ同時だった。はオレの笑顔が珍しいといって、オレは涙目のが珍しいと言った。


…抱きついてくるの耳元に、そっとつぶやく。オレの言葉にはゆっくりと頷いて、背中の両手に力を込めた。




『天使というのは、雪のことだったんだな』









アトガキ。


うわー。なんっか…リハビリ作品にしても出来が悪すぎる。いやー、ラストが書きたいがために書いてきたはずなんですが…ラストが一番ひどいような気がするなぁ。すみません、一応完結でございます。ご不満な方もたくさんいらっしゃるでしょうなぁ…ご勘弁をっ!
とりあえず、冬の間に書き終わってよかったですv(笑)









2008.02.23 saturday From aki mikami.