二人の距離は、3cm。

Scene 1


『あんたのそういうところ、大嫌い』


今日、に面と向かって言われた言葉を思い返しながら、布団の中で寝返りを打った。
好かれてはいないだろうと薄々気づいてはいたが、はっきり「大嫌い」だと言われてしまえば、さすがに傷つくというもの。


…ましてやそれが、好きな女の子からなら、なおさらだ。


それを言われたのは、二人で生徒会顧問の先生に提出するプリントを記入しているときだ。向かいの席に座っていたが、カバンの中の何かを見ながら悲しげな表情をしたように見えたので、少し休憩しようと俺から提案したら、少し驚いた顔をしたあとに先程の言葉を言われてしまった。


何か悪かったかと心当たりを探したが見つからなかったので、余計な気遣いだったかと問うと、少しムッとした顔で、そういう優しさはいらない、と言われた。


そういう優しさとは一体どういうことだろう…そう問いたかったが、それ以上その話題に触れても彼女を怒らせるだけだと思い、そのままほとんど会話をせずにプリントを仕上げ、解散した。


生徒会副会長、


彼女は怒りっぽいところがあるものの、誰よりも努力し、周りを観察し、気遣いをし、仕事を完璧にこなそうとする。自分に対しては小さなミスや妥協も許さず、他人に対しては誰よりも優しい。


その彼女に嫌われてしまうということは、きっと相当ひどいことをしてしまったのだろう。それはもしかしたら今日ではなく、過去の話かもしれない。


そう思いながら、過去の出来事や彼女とのやり取りについて思い返して見るが、やはりそれらしいものは見つからないまま、夜は更けていった。