翌日。にノートのことを話すと、彼女は顔を真っ赤にした。


「そ、…の、手塚」
「どう…だった?」
「え?」
「話…」


照れくさそうに話す。俺は、素直に感じた事を伝えようと思った。


「すごく…綺麗な話だった」
「え?」
「俺は、すごく好きだ」
「本当?」
「あぁ」


流石に俺がモデルになっている話までは触れられなかったが、その言葉には満足したらしく、満面の笑みを浮かべた。それから、あのね、といいながら、足元の鞄をあさる。


「これ見て!」


そう言って差し出されたのは、一枚のチラシ。一番上には、「中高生文芸コンテスト」と書かれている。


「私、その話でね、最優秀賞とったの!」
「本当か?」
「本当! でね、最優秀賞と優秀賞2作は、本になるんだって!」
「! すごいな… 夢、叶ったな」
「へへ。 手塚のおかげ、だね?」


くす、と笑ったは、嬉しそうにチラシを見つめた。…自分の夢が叶うと言うのは、どれほど嬉しいものだろうか。俺の、現在の目標、…全国制覇。出来るだろうか。


「俺も…お前のように、頑張らないとな」
「何言ってるの、もう頑張ってるでしょ、部長さん?」
「…そうだな」
「あ…笑った」
「え?」
「今、くすって笑ったよね?」
「…そうか?」
「そうだよ。あー、何か今日はいい日だなぁ♪」


そう言って、は足をぱたぱたさせた。図書室には俺たちしかいないので、遠慮することはないだろう。俺の方もと一緒に喜びたいくらい嬉しい。


「そういえば、ノートはどうする?」
「…え?」
「これ…」


間違ってもって帰ってしまった、のノート。


「あ…もう、パソコンに起こしてあるから…」
「……じゃあ、もらってもいいか?」
「え?」
「…だめならいい」
「―――いいよ」


すこし戸惑った様子だが、嫌がっているわけではないらしい。俺は、赤くなる彼女の頭を2、3度撫でて、ノートをまたかばんにしまった。


「、ちょっと!」
「どうした?」
「な…何でも、」


すこしして、彼女が俺の行動に照れたのだとわかると、すこし嬉しかった。それから、もう一度見たいと思って今度はもっと優しく撫でてみる。


「ちょっ、こ、確信犯…!」


抵抗してくるが、力もそれほど強くはないし、本気ではないとわかる。


こうやって2人でいる時間が、長く続くことを祈った。