「手塚って、…お昼は練習しないの?」
突然が尋ねたのは、関東大会予選第一回戦…氷帝との試合の前日だった。
「…何故だ?」
「んー、だって、他の皆は昼休みも練習してるけど、手塚いかないじゃない。部長なのに。それに、明日試合でしょ?」
「昼は自由参加だ」
「でもさ、真面目な手塚なら、普通に彼の中に混じってそうだけど」
の言っていることは、最もだと思った。俺としても、出来れば部長として、昼も練習に参加したい。それに、皆がいなくても、練習はしたい。…だが、2ヶ月前に言われたのだ、病院で。
『肘を庇うあまり、肩にも負担がかかっている。気をつけて、長時間の試合や練習はさけるように』
それは、自分でも感じていたことだった。
他の部分に比べて、左肩の披露が濃い。それに、動きが鈍い時がごく珠にだがある。
「…手塚?」
が、心配そうにのぞきこんでいた。
「いや…何でもない」
「うそ」
「え?」
「何か悩みとか、あるんでしょ?…話せるなら、話して見てよ。…もしかして、前に大石が言ってた肘の怪我のことじゃ…」
「いや…肘はもう、完治している」
「そう…じゃあ、どうしたの?」
言うべきか、若干迷った。言えば、を心配させることは間違い無い。だが、言わないで隠しておくのは、もっと気が引ける。
「…肘は、治ったんだが…」
「またどっか、悪いの?」
「―――…肘を庇って、肩を壊しかけている」
「っ!」
「長い試合や練習はしないでおけと言われた。だから、せめて昼だけでもと思って、練習を控えている」
俺の言葉に、は口に両手をあてたまま、目を見開いた。
「そ…ん、な」
「…?」
「だって…明日は"あの"氷帝学園なんでしょ?」
「あ、あぁ」
「貴方は当然シングルス1で、"あの"跡部君と戦うんでしょ?」
「そうなるはずだ」
「彼も、貴方と同じ全国区なんでしょ?だったら、試合長引くにきまってるじゃない…!」
が俺を心配してくれているのが、痛いほどにわかる。俺に試合に出るなと言っているのも。…だが、俺は部長として、逃げるわけには行かない。
…青学の、柱として相応しい試合を。
「ありがとう、。…だが、俺は」
「止めてよ!私、手塚がテニスできないの…いや、だから」
「大丈夫だ。まだそうなると決まったわけではない。…それに、―――俺は、青学テニス部の部長だ」
「―――!」
「俺が逃げたら、部が逃げることにもなりかねない」
そんな風に、自分を奮い立たせる。俺だって、当然肩のことは怖い。だが、恐れているだけでは、前には…全国には進めない。
「…そう、よね。わかった」
「…」
「でも、…無理だけは、しないで?」
縋るような瞳を向ける。だが、俺はそれを約束することは出来ない。数回頭を叩いて、俺は出来るだけ、彼女に気持ちを悟られないように振舞った。
―――…青学にすべてを掛ける。