最近、楽しみで仕方ない授業がある。…楽しみな理由はあまりにも不純で、人には言えないけど。 「…席に着け、」 「っ…BJ先生!」 授業名、数学。理由、先生が好きだから。 ドキドキする 先生を好きになった理由。…といっても、感動的なエピソードがあったわけじゃない。好きになったのも、忘れてしまうくらい昔の事だし。最初の理由は、声が素敵だったから。次に、性格があってたから。更に最後は、…いつも怖い顔をしている先生がふと見せた笑顔が、…可愛かったから。 黒板に向かって文字を綴る先生が、難しい言葉を喋る。私はそれを聞きながら、いつもの数倍は綺麗にノートを書いた。 最初は只の「like」だった。だって、別に何時までも喋ってたいとか、思った事もなかったし。けど、何時の間にそれが変わったんだろう。 ・・・でも自分、冷静に考えよう。私は高校三年生、遅生まれの17歳。先生の年齢は知らないけれど、見た目から予想しても、35は下らない。下手をすれば40過ぎかもしれない。 ・・・もし35だとしても、年齢差は18歳。・・・何て絶望的な数字だろうか。それこそ先生はロリコンじゃないだろうか? 例えば私が先生と結婚して、20の時に子どもが生まれたとして、先生は38歳。それから20年して子どもが20歳になったときには、先生は57歳だ。 日本人男性の寿命は75歳ぐらいだったはず。女性は85歳ぐらい。じゃあ、私は先生が75歳で亡くなってから約30年、如何やって生きていくのだろうか?大体先生が75歳まで元気で生きていてくれるなんて、そんな保証はないんだ。 ・・・そんな妄想みたいなことを考えて居れば急にトントンと肩を叩かれる。驚いて顔を上げれば、そこには大好きな先生が立っていた。 「、ボケッとするな。黒板書け」 そんな言葉に"はい"と答える事も出来ず、私はまたせっせと、何時の間にか止まっていた手を動かす。先生はそんな私を見届ける事もなく、またすぐ授業へと戻ってしまった。 何時だって先生はそうなんだ。私の方を殆ど見てくれない。それは私の席が一番前で、一番ドア側で、視線が一番行きづらい所だって言う理由もあるかもしれないけれど、それにしたって。この間なんて、前の日徹夜でついつい授業中に寝てしまっても、起こされたのは授業時間が半分ほど過ぎてからだった。肩を叩かれたときは内心ドキッとしたけれど、後から見られていなかったっていう事実に気づいたら、死ぬほど落ち込んだ。 ・・・期待される事はしない。まるでそう言っているかのような、先生の行動で、もしかして私の気持ち、気付かれているんじゃないとも思ってしまう。でも一度だってこの思いを口に出した事はないし、顔に出した覚えもないし。それに私は悲しい事に、先生と殆ど会話しないから、ばれる事は無いと思ったんだけど。 あぁ、もう。本当に心臓に悪い。今・・・授業中って言う時間でさえも、ばれてると思うとドキドキする。勿論それだけじゃない、先生の動作とか声とか、全てにドキドキするんだけれども。 全くもう、如何にかして。 このドキドキを。 戻る 次 2005.07.19 tuesday 三上秋。 |