きっかけなんて・・・考えたこともなかった。だって私は、今以上の関係になろうなんて思ったこともないし。けれど友達にいわれて、なるほどと思ってしまった。




「やっぱり恋愛っていうのはきっかけよね、きっかけ」




・・・・さて、私と先生のきっかけはなんだろうか。





*きっかけ





それは本当になんでもいいのだ。友達はそういって、自慢気に笑っていた。実際にそれはどうなのかなって思いながらも、友達が言っていた例と自分の場合を照らし合わせてみた。


例1、登下校が一緒。
例2、席が近い。
例3、趣味が共通。


・・・この中でまず真っ先に除外されるのは、一番だろう。登下校をいくら一緒にしたくても、私と先生では家の方向が違うだろうし、先生は車で、私は自転車登校だ。さらにとどめを指すように、先生は朝は職員会議があるし、帰りは部活の顧問がある。・・・時間帯がまるっきしかみあわないのだ。

そんな私に一番手ごろなチャンスは、きっと3番だろう。先生の趣味は知らないけれど、それを聞き出せればこっちの物。私が好きなことならば好都合だけれど、そうでなかったとしても教えてもらえばいい。

まぁ3番目で問題なのは、私が先生に趣味を聞けるかどうかだ。・・・正直なところ、今の私には其れは無理だ。勇気がない。だって趣味を聞けるような仲の良い間柄でもないし、たとえ仲が良くたって、先生に趣味を聞くのはそれなりに勇気のいることだと思う。

それじゃあ後に残ったのは2番だ。・・・席が近いって言っても、たぶん友達は私の好きな人が学生だった場合で話しをしたのだろう。私と先生の間には席もなければ、近いとか遠いとか、そういった次元の話しもない。


・・・じゃあ私には望みなんてないじゃん。そんなことを思いながらも、職員室のドアをノックする。カチャリと開けて目の前を見ると、私の大嫌いな部活の顧問が、大好きなBJ先生と何やら楽しそうな話しをしていた。

・・・そうだ!この大嫌いな顧問とBJ先生は、席が隣だったんだ!

私の心の中に、一筋の光明が差してくる。今の瞬間だけは、大嫌いな顧問が大好きに思えた。




「先生!」




こんな些細なきっかけだけれど、私にとっては大きなきっかけ。
私の呼びかけたひと言に、顧問とBJ先生が同時に振り向いて。
そんな口元が緩みそうになる状況。私は先生に向けてしっかりと笑いかけた。





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2005.07.22 friday From aki mikami.