夏の行事
一、炊事遠足
・・・一ヶ月前に終了。
二、期末テスト
・・・一ヵ月後。

三、学校祭

・・・・・・・・・・・本日より。





*視線が絡んだら





私は今、先生の姿を探している。・・・探しながらも、マイムマイムを躍っているのだけれど。
友達と手をつないで、半分馬鹿騒ぎで躍っていると、何だか目が回ってくる。
それでも私は先生を見つけるという使命があるから、頑張って暗闇の向こう側に目を凝らした。
学校祭一日目は、"前夜祭"と名づけられて、正直三日間で一番楽しい。皆と夜遅くまで学校に居るなんて、こんな楽しい状況は他には無い。更に私にとっては先生を長く見て居られる一日でもあるわけで。最高だ!そんなことを思いながら登校してきた。
そしてそんな私を更に浮き足立たせるようなことは、前夜祭の最後にあるメインイベント:花火。
毎年友達と一緒に見ていたそれを、先生と見られたら・・・こんな素敵なことは無いだろう。

音楽がマイムマイムからジェンカに変わって、今まで手をつないでいた人の肩を掴んで皆で列車ごっこ。私は後ろの方に居るから一番前の人が勝っているのか負けているのか、正直見えたもんじゃない。・・・それでも、何となく前の人の雰囲気とかでわかるから、それはそれで楽しめた。

・・・けれど、そんな間も先生の姿は見えない。

もしかしたらここに居ないんじゃないだろうかと思ってしまう当たり、何て心配性なんだろうと自分でも思う。だって先生はクラスを受け持ってて、居なくなれるはずは無いと言うのに。


音楽が止まって、皆の動きも停止する。・・・すると、学校祭実行委員の声がして、これから花火を打ち上げることを生徒全員に告げた。
私の周りの人も遠くの人も、皆花火が打ち上げられる方向に向かって走り、ある程度近づいたらジッと目を凝らした。

・・・さて、私は花火ではない、人ごみに目を凝らす。先生の姿を探すけれどなかなか見つからなくて、友達とか知らない人とかの間を縫って、キョロキョロしながら歩いた。
真ん中あたりに人が固まっていたところから抜けて、少しだけ開けたところに出る。すると、一番端から少しだけ離れた所に、腕を組んだ先生が空を見上げて立っていた。


心臓が大きくひとつ脈打って、今にも走り出したくなる。その気持ちを抑えようと思ったらどうやら抑えきれなかったようで、私の足は小走りに動いていた。




「先生っ!」
「ん?」




私の呼びかけに振り向いた先生。私は思わず顔が緩んでくるのもそのままに、先生のすぐ隣に並んだ。




「花火なかなか上がりませんねぇ」
「今年は去年よりも凄いらしいからな。準備に時間掛かってるんだろう」
「え?そうなの?今年は凄いの?」
「そうらしいぞ」




そんな他愛ない会話をして、私が「やったっ!」といった瞬間、ピューっと音がして、光が空に向かって飛んでいく。
・・・あ、と思った瞬間にはもう、バーンと言う音と共に空に光の花が咲いていた。




「うわぁっ!上がったっ!」




無意識にそんな声を上げてしまって、はたと思い返す。先生が五月蝿いと思ったんじゃないかと、盗み見るかのようにチラリと先生を見遣った。・・・けれどそれは私の考えすぎだったようで、先生は花火を見あげて少しだけ笑っていた。
・・・光に照らされて浮かび上がる横顔は、何て素敵なんだろうと思う。ずっとその顔を眺めて居たい気がするけれど、もしそれで目が合ってしまったら・・・?恥ずかしくて花火どころの話ではなくなってしまう。私は慌てて先生から目を逸らして、ただひたすらに花火を眺めていた。


先生と並んで見る花火は、いつもの数倍も・・・綺麗だった。





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2005.07.22 friday From aki mikami.