自分の中の小さな変化に一度気づいてしまうと、其れがなんなのか、気になって仕方がなくなってくる。だがそれに気づいてはいけないような気もしていて、知らず知らずに自分の本音に蓋をした。
・・・だが、その蓋は脆く、すぐに取れそうになってしまう。

・・・今、俺はのクラスの授業にきている。の席は一番前のドア側で、入ってきた瞬間、一番最初に目にはいる位置にいる。このクラスは授業数の関係で少し遅れているから、早めに来て早めに始めようと思って、始業ベルがなる前にきた。
・・・が正面に見える位置で、彼女を盗みみる。
は、数人の女友達に囲まれてなにやら楽しそうに話をしていた。・・・其れは良くある光景だろう。は一度だけこちらを放り向いて、軽く一礼して話に戻っていった。何の話をしているのかは知らないが、眠そうに目を擦っている。寝ていないのだろうか。俺は少し思ったが、その瞬間始業ベルがなったので廊下にいる生徒に向けて教室にはいるよう叫んだ。


がすぐ目の前で、クスクス笑う。それも俺の方を見て、だ。




「なんだ、
「いえ〜何でもないですよ〜」




そういっては、また楽しそうに笑う。いったい何がそんなに楽しいのかと思ったのも束の間、大体の生徒が教室に入ったのを確認してしまったのでさっさと授業を開始する事にした。




「起立」




このクラスの号令係の男子がそう声をかけ、クラスの者全員が立ち上がる。もちろんも立ち上がるのだが・・・やはりまだ笑っていた。注意の一つでもするべきなのだろう。これから授業を開始するという時間に笑っているのだから。だが、なぜか何もいうことができないでいた。




「礼」




再びそんな声がかかり、ほとんど礼もし終わらないうちに男子の殆どは座ってしまう。普段なら其れも注意するところなのだろうが・・・気持ちがおかしい。そんな気分にはなれなかった。




「前回は何処まで進んでた?」




そう一番前の生徒に訪ね、その生徒のノートを見やる。すると其れは俺が思っていたよりもずいぶん前で、確認のためにもその隣の生徒のノートものぞいた。そちらは、俺が思っていた通りの所で終わっている。そこまで分かったのだ、もう授業を開始しても良いものだろう。だが俺はいったい、何を思ったのだろう。




、ノート出せ」




先ほどの生徒の更に隣・・・に、わざわざそんな言葉を言ったのだ。
は少し驚いた顔をして、慌ててノートを取り出して開く。その一番最後は、やはり俺が記憶していた所までだった。


・・・俺の中のどこかに、と話したい、そう思っている気持ちがあるような気がする。
こんな状態で、俺は過ごしていくのだろうか?




蓋をしたはずのへの思いは、俺を空回りさせていく。




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2005.07.24 sunday From aki mikami.