何度顔を会わせても。貴方に言いたいことはたった一つ。





*伝えたいこと





あの夜から、土日をはさんで3日ぶりに顔を見れる。・・・だからなのか、心臓が張り裂けそうなほど高鳴って・・・なんだか会わない方がいいんじゃないかと思ってしまった。・・・だってあの夜にあったことは、生徒と先生という立場からは絶対にあってはいけないことだから。

触れた唇に、ざらついた舌。回された腕が熱くて、互いの鼓動が聞こえそうな程近かった。
・・・唇を離して、BJ先生が呟く。"愛している"と。私は其れに答えも出せずに、暖かい温度に包まれて寝てしまったけれど。


・・・自分の気持ちに迷っているわけではない。ただやっぱり、私たちの立場やら年齢やらを考えると、本当にそう答えを出していいのかわからないのだ。

・・・そんな気持ちの中、今日一番の不幸。




―――次の時間が、BJ先生の授業なのだ。




今すぐ逃げたしたくなるくらいの緊張。時間があと1分、2分と近づいてくる度に、胸の鼓動が高鳴った。きっと今私は、ひどい顔をしているだろう。恥ずかしいような嬉しいような、悲しいような。


すると。




「―――
「っあ!先生・・・!」




いつの間にか。先生が私の後ろに立っていたのだ。
私は何がなんだかわからなくなった。




「あわわわっ・・・せっ・・・せせせせ、せんせっ」
「・・・あからさまだな」




そう言って、先生は小さくため息をつく。それから4つに折り畳まれた紙を胸ポケットから取り出して、私に差し出した。




「・・・後で読め」




そう低く呟いて、さっさと教卓まで歩いていってしまう。私はあっけにとられながらも、私を半放心させた張本人の「席に着け」と言う声で我に帰った。


・・・あの人は、私の寿命を縮めたいのだろうか・・・?


そんなくだらないことを思いながら、私は何とか席についた。









+ + +









メモに書いてあったのは、たったひとこと。

―――6時半、3−4。

これは"来い"と言うことなんだろうか。だったら他にも何か書いて欲しいところだけれど。

ただ今の時刻、6時28分。私は弾むような沈むような足取りで、3−4の教室に足を踏み入れた。


・・・先生はまだ来ていない。まぁ部活あるから当然かなぁ・・・とか思うけれど、時間通りには来て欲しいなぁ。

ぼんやりと思いながら、窓の外に目をやった。

オレンジ色に輝く夕日がまた眩しくて。何でこんなに眩しいんだろうかと思うくらいだ。雲までも自身の色に染めて・・・全てを染め上げて。


私にとって、先生は夕日なのかな・・・?全てを先生色に染め上げてしまったんだから。
・・・けれど、先生は月みたいだと思う。月みたいで夕日みたいって言うのは、矛盾しているかもしれない。



・・・ぼんやりしていたら、もう約束の時間を3分ほど過ぎたらしい。そして、廊下からバタバタと走る音が響いて、私は思わずこぼれてくる笑いをこらえた。




「遅くなってすまない!」




そう言って駆け込んできたのはもちろん先生で、部活からそのままきたのか、白いTシャツに黒いジャージ姿。ますます笑いが止まらなくて下を向いてこらえると、先生が不服そうな声で言った。




「何を笑ってる?」
「だっ、て・・・!おかしっ・・・く、てっ・・・!」
っ」




そう言いながら、先生は私を抱きしめてこちょばしてくる。其れに更に笑えてきてけらけら笑っていると、先生も今まで見せたことのない様な顔で笑った。



・・・そしてふと、数秒前のことを思い出す。




「っ・・・!」


余りに自然に言うので気づかなかったけれど、さっき先生は確かに私のことを・・・「」と呼んだのだ。




「先生、今・・・私のこと!」
「あぁ・・・と呼んだ」
「え・・・だって・・・」




顔がカァッと熱くなる。呼ばれたことにも、呼ばれた声にも。




「・・・この間の返事をくれないか・・・?」
「っ・・・!」
「くれないのか・・・?」
「いや・・・そんな」




ポツ、ポツ、と・・・。何と言っていいかわからなくて。すると先生が私の目線までしゃがんで、じっと見つめ合う形になった。


逸らすことが出来ない。まるで金縛りに合ったみたいで、けれど不思議と、心は決まってしまった。




「・・・わ・・・私、も・・・!私も先生が好き・・・!」
「・・・!」
「先生・・・抱きついても、いいですか・・・?」




自分でも恥ずかしいこと言ってるのはわかっている。それでも、目の前の先生を見たら・・・どうしても抱きつきたくて。




「もちろん」




そう返ってきて、ほっとして。今すぐ抱きつこうとしたら、逆に先生に逆に抱きしめられてしまった。




「愛してる」
「っ・・・私も・・・!」




ずっと、伝えたかったこと。やっと伝えられて。
回された暖かい腕が、いつまでもいつまでも、そばにあることを願って、私はゆっくりと目を閉じた。









アトガキ。



漸く終りました、"BJ先生"連載!
無事に全10話で終る事が出来ました!
よかったです・・・!いやぁ・・・長かった・・・。

パラレルで連載していた形になりましたが・・・
今度はパラレルじゃなくて普通に連載もして見たいな(笑
BJ最高!


それでは、感想のある方、文句の在る方、又は誤字、脱字は掲示板まで。


失礼します。









2005.08.06 saturday 三上秋。