Scene 02



そうしてやってきた浅葱さんの部屋は、正直あまりにも物がなさすぎて落ちつかなかった。けど、浅葱さんが意外と色々話してくれたから、その分気が安らいだ。


浅葱さんには大学生の友達がいて、その人が私のようになぜかユーレイを呼び寄せてしまうこと。そしてその人のせいで、何度もこんな風に騒動に巻き込まれていること、そして、そのひとがちょっとだけ私に似てるってこと…他にもいろんなことを話していたけど、正直忘れてしまった。だって浅葱さん、お酒を飲んでたらすごく饒舌で、すらすら言葉が出てきて全部覚えてられないんだもん。


…で、今浅葱さんは結局寝てしまっている。私はまさか家に帰ることも出来ずにその姿を茫然と見ている。と言うのも、テレビをつけると浅葱さんが起きてしまいそうだからだ。見かけで判断しただけだからわからないけど、音には敏感に反応しそうだと思う。


で、することもなく、手持ち無沙汰で私は浅葱さんの隣に座っていた。


一応毛布かけてあげたんだけど、もしかしたら暑いかもしれないなぁ、とか考えたけど、今更はぎとって寒いとか言われたらいやだなぁ。


そんなわけでなにをするでもなく、本当に茫然と、ただ座って見ているだけ。家に帰ればケータイとか、小説とか、マンガとか、色々暇はつぶせるんだけど、残念ながらどれも全部置いて来てしまっている。


浅葱さんの寝顔は、何だかとてもきれいだ。突然なに、って感じだけど、本当にそう。


私は毛布からはみ出ている浅葱さんの手に軽く触れてみた。何でそんなことをしたのかは謎…なんだけど、でも何となく触ってみたくなって。


すると、浅葱さんは(多分無意識に)私の指を、ぎゅっと握ってきた。驚いたけど、ひっぱったらきっと起きてしまうから、離すことも出来ない。


小さな子供のような仕草だなぁ、と思ったら、思わず笑みが漏れた。で、仕方なく、手は離さないままでテーブルに頭を擡げる。


「おやすみなさーい」


そう言って、私も緩く目を閉じた。指先から伝わってくる人肌が心地良くて、すぐに眠りについてしまった。