Scene 04



翌日。


授業が終ってすぐ(2時くらい)に浅葱さんにメールをしたら、すぐに返事が帰ってきて、仕事が終るのは多分6時すぎになるらしい。それまで時間をつぶそうと思って、例の懐中時計の友達と二人で喫茶店に入っておしゃべりをして、で、そのときに友達がいやーなことを思い出してしまった。


「…そういえば、この時計ってね、あまり良くないらしいよ」
「え"」
「その浅葱さんって人が言ってたこと、多分大当たりよ」
「えええぇ!?」
「なんかねぇ、昔その懐中時計の持ち主が、自殺したことがあったらしいのよ。原因はよくわからないんだけど…その人が亡くなった後にね、やっぱり今回みたいに、夜な夜な幽霊が現れたことがあって…でも、時計をきちんと綺麗に直して、動くようにしたら、何にも起きなくなったんですって」
「え?で、でも今時計は返してもらって、動くように…」
「なってないの…気付いてなかったの、?」
「え…!?」
「なんかね、あまりにも古すぎて直せないらしいのよ。だから、もっとちゃんとした、…なんていうんだろ、老舗?に言ってやってもらわなきゃだめなんだって」
「そ…そんなぁ…」


と言うことは、まだ悩まされるの?


「…で、でも、私その時計とは関係ないし!もういいよね!」
「なに言ってるのよ。私たち友達でしょ?」
「ととと、友達ですけれども!」
「友達を見捨てちゃいけないんだぞー?」
「厄介事を押し付けるのはいけないんだぞー?」
「あらやだ!だってには浅葱さんっていう強ーい味方がいるじゃないの!」
「浅葱さんは会社員なの!多忙なの!迷惑かけられないの!」
「とかいってー、昨日きっちり泊まってきてるくせにー!」
「ば、ばか!あれはのせいで仕方なく…!」
「まんざらでもなかった、って顔してるけど?」
「なっ…!」


た、確かに楽しかったよ!下手にみんなといるよりよっぽど安心したし!それに…


言葉が何も紡げない私に気がついたは、くすくす笑った。


「あーあー、わかりやすいんだから」
「だ、だって!」
「まぁ、いいんじゃないの?これを期に彼氏が出来て、更には怖いの嫌いの強い味方が出来て…一石二鳥じゃない!」
「ばか!そんなことできるわけっ


~♪


突然着メロが響いた。この音楽はもしかしてもしかしなくても…


「お、噂の浅葱さんか~?」
「な、なによ噂のって!」
のラブラブ相手でしょー?」
「気持ち悪い言い方しないで!」


一喝した…けど、あんまり聞いてないらしくてはニヤニヤ笑っている。私はそんなを尻目に、ケータイをのぞいた。


「…今仕事終ったから、迎えに来てくれるって」
「へぇー、優しいんじゃん?」
「うん…そうだね」
「よかったねぇー?」
「あぁでも…」
「ん?」


私はケータイを、そのままに見せた。


『君の友達に文句のひとつも言ってやりたいからそのまま一緒にいるように』


「…………」
「…………」
「優しい人じゃ…ないみたいね?」
「うん」


ふー、と長いため息をついて、私たちは二人して、冷めたコーヒーを啜った。