Scene 06



回転寿司屋について、一応今わかっている事情についてひと通り話をすると、浅葱さんは2貫目のいくらに手をつけたところでぴたりととまってしまった。


「……あ、あの、浅葱さん…?」
「それってどう考えても、僕は巻き込まれたってことか?」
「まぁ、そうですね」
「どうしてそう言うことが起こったときにせめて除霊とかしてもらわないんだ…それが本当に効くか効かないかは別として、もしかしたら効果があるかもしれないだろ」
「浅葱さん、既に日本語になってない気がします…」
「とにかく!僕はこれ以上関わるのはごめんだから!」
「そんな!浅葱さん!助けてあげましょうよ!」


そう言って、萩間君まで浅葱さんに詰めよってくれる。


「なら萩間一人でやんな」
「そんな!俺が怖いのダメだって知ってるじゃないですか!」
「なら無責任なこというなよ。それに、僕よりお前の方がそーいうのには強いんだ…何度も言ってるでしょ」
「そうですけどそうですけどそうですけど!」
「あーもううるさい、僕は知らん!」
「浅葱さんー!ほら、みんな浅葱さんがいるだけで心強いんですよー!」
「そうです!お願いします浅葱さん!」


なんだかいつのまにか浅葱さんを取り囲んでお願いタイムになっている気がする…私はもうどうしたらいいのかわからなくて、すっかり意気投合していると萩間くんと、囲まれる浅葱さんを見ていた。大体、浅葱さんは見えるだけでただの一般人だっていってた。それが本当だとしたら、私たちが何をお願いしたってどうしようもないと思う…と思っているのはどうやら私だけみたいだ。


「……とにかく、その時計のことを詳しく知っている人に聞くしかないね」
「ふんふん」
「後は、その時計を一刻も早く直してもらう」
「ふんふん」
「………以上」
「え、その後は!」
「特に何も」
「そんなっ!」
「あー!わかったこうしましょうよ!」


突然がそう言って立ち上がった。どうやら周りの目は気にならないらしい。


「解決するまで、昨日の夜みたいに浅葱さんかの家にあの時計を置いて、どっちかの家に泊まればいいんですよ!その時計をが大学まで持ってきてくれれば、調べるのは私とでがんばります!」
「え、ちょっとまってそれ私二重の迷惑!」
「僕にも迷惑だ!」
「でもー!名案じゃないですか!他にどうするっていうんですかー?」
「そっちでどうにかすればいいだろ」
「だからどうにも出来ないんですよ。本当、夜のうち預かってくれるだけでいいんです!お願いします!」


がば、と頭を下げられる。お酒飲んでるせいなのか…なんだか顔が赤いし呂律が回っていないような。それに萩間君も…なんか怪しい…


「お願いしますっ、浅葱さぁん!」
「お願いしますー!」
「……」
「……」


思わず浅葱さんと二人で顔を見合わせた。…何だか、引き受けざるを得ないこの雰囲気…


「どうします、浅葱さん」
「多分考えてることは同じだと思うけど」
「……そうですね」


と頷いた途端に、ついため息が漏れてしまった。それも浅葱さんと同時に。


「…今回だけだからね」


と浅葱さんが答えると、二人はなぜか抱き合って喜んだ。あぁ、場所、居酒屋にすれば良かったかな。


「迷惑かけます、浅葱さん」
「…お互い苦労するね」
「ですね…」


私たちは、はは、と乾いた笑みを浮かべることしか出来なかった。