02.「私は間違ってたのかな…?」


(01の続き)



あれから特に『Mirror』のことは話題にならなかった。世の中から静かに消えていった。…ただ私の中からは、どうしても簡単に消えていくという風にはいかなかった。どこに行っても、なにをするにも、常に周りの目が気になる。特に探と一緒にいると、そうだ。


この間一度だけだが、探と一緒に警視庁にいった。そのとき探は私のことを皆に紹介して、あの『Mirror』にも負けないほどの技術力を持っていると紹介したら、随分驚いた顔をされて、それから君が『Mirror』だったりして、なんて事をいわれた。私は笑ってごまかしたけれど、もしかしたら引きつった顔をしていたかもしれない。


こんな風にびくびくしながら生きる、…それを選ぶくらいなら、やっぱり私はつかまった方が良かったんじゃないかと思う。私がこうやってドキドキしている間に、勿論探も同じ思いをしているはずだから。…自分がどんな風になろうと、そんなことは構わないけれど、やはり探だけは無事でいて欲しい。自分のために捕まるなんてこと、あってはならない。


布団に包まって、隣にある彼の綺麗な寝顔を見つめた。…すらっと長い腕が、私の頭の下に回っている。それを見ていると、何だか今が現実ではない気がして来てしまう。…幸せすぎて。


「間違って、ないよね?」


口に出した問いかけは、夜の闇にすぅっと消えていく。こんなに彼に愛されて、こんなことを思うのは、失礼なのかな…?


「…何が?」


どき、とした。気づくと目の前の探が、片目だけをあけてこちらを見ている。小さく欠伸を零して、今度はちゃんと両目で私を見据えた。


「探…ごめん、起こしちゃった?」
「いや、うとうとしてただけだよ」
「でも」
「大丈夫。…それより、何が間違ってないの?」


頭の下にある腕がわずかに動いて、ふわりと私の頭を撫でる。その心地良さが心に染みていく前に、私は口を開いた。


「…私が、ここにいること」
「え?」
「あの時、探と一緒にいたいって思ったけど、…それが、間違いじゃないよね、って」
「そんなことを考えてたの?」


くす、と笑った探が、私の唇を奪う。ゆっくりとした優しい動作に何もいえなくなる。


「幸せを選ぶことが、悪いことかな」
「でも」
「それに、もし間違っていたとしても…あとから正せばいいだろう?」
「…うん」
「それに、君は悪いことをしていたわけではないんだから」
「…でも、犯罪でしょう?」
「……、君の2代前の『Mirror』はね、警視庁直属の機関だったんだよ」
「え…?」
「それからどういう経緯で個人として活動するようになったかは知らないけど、…僕の父は、また『Mirror』を警視庁に戻したいと考えているみたいなんだ」
「…は?」
「だから、『Mirror』だってばれても問題はないってこと」
「それって…組織ぐるみの隠蔽じゃないの?」
「いやな言い方するな…まぁそうなるかもしれないけど、…警視庁にしてみれば、必要な戦力だと判断してるんじゃないかな」
「そ、んな…」
「でも、君を警視庁に売るつもりはないから大丈夫」
「え?」
「…君は、僕だけのものだから」
「――――!!探っ」


どうしてこの人はそう言う恥ずかしい台詞を少しも恥ずかしがらないでいえるんだろう。しかも私が照れるのをわかってていってくるから、たちが悪い。


「…愛してる」
「わかってる…」
「もう何もいわないで」
「……うん」


探の腕が私を包み込む。彼のぬくもりが伝わって、私の体温をあげていく。


「…好きだよ、探」


囁いたら、答えだと言うように口付けされた。そのあとは私も探も、すぐに眠りに落ちてしまった。









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