ゆらりと揺れる視界の中で、唯一はっきりととらえられるもの。…少し笑ったような、殺生丸の姿。優しく私の名前を呼んで、引き寄せて、口付ける。…でも、私は頭のどこかで認識している「これは夢だ」と。
殺生丸と離れて旅をしはじめて、早くも七日がたつ。かごめちゃんたちにはすっかり迷惑をかけてしまっているけど、みんなは気にしないでと言ってくれる。
どうしてこうなってしまったんだろう。私は、こんなに弱い人間だっただろうか?
「…ちゃん?」
重いまぶたを開けると、かごめちゃんが心配そうな表情で私を見つめている。
「…大丈夫?何か、うなされていたけど…」
「うん。大丈夫…」
「また、殺生丸のこと考えてたの?」
「…」
黙りこんだ私に、かごめちゃんは小さくため息をついた。何も言わない事が肯定だとわかったから。…そうやって考えてみて、それは彼の癖だったなと思い出してしまった。
「…殺生丸が、夢にでてくるの。すごく優しくしてくれる。…でも、今その優しさは、死んでしまった神楽に向けられている。…あうのが怖いの、彼に」
「ちゃん…」
「殺生丸とあって、笑っていられる自信がないの」
―――夢が現実で、現実が夢なら良かったのに。
思ったって起こり得ないことだ。そう考えたら、いいかげん泣けてきた。
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#05
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