13. 「君はきっと、私に惹かれていってる」



いま、学校内で一番話題になっていること…それは、多分私のことだろう。といったって、みんながそれを私だと知っているわけではない。

元々この学校には、何かと話題になっている黒羽快斗や、怪盗キッドを追いかけている白馬探がいる。それじゃなくても噂話などが多い学校で、もちきりのこと。


「この学校のパソコン、ハッキングされたんでしょ?『Mirror』に!」
「そうそう!個人情報とか漏れてたらどうする!?」


ハッキング。そんなものは、私にとってお手の物だ。小さいころからその手の教育を受けているんだから。今回この事実が発覚するまでにも、私何度も学校のホストに侵入している。…悪事があるところなら、どこにでも。それが私の使命だ。今回は、ある教員から、事務員の一人が経費を着服しているという極秘の通報をうけた。…もちろんその教員も、私の正体は知らない。


「おはよう、さん」


突然そうかけられた声。私は現実に戻された思考で、その人物を判断した。


「おはよう、白馬君」
「またやってくれましたね。さすが『Mirror』」
「何のこと?私パソコンなんてぜんぜん触れないけど」
「ご冗談を。…日本一のハッカーが」
「とんだ言いがかりよね」


彼とのやり取りは、いつもこんな調子だ。最近はキッドのことだけじゃなくて、いろんな事件に手を出し始めたらしい。…私をMirrorだとにらんでいる彼と、私。私は立ち上がると、振り返らずに教室を出た。その後ろを、当然のように彼はついてくる。


…こんな風に出会わなかったら、もしかしたら気の合う友達になっていたかもしれない。


お気に入りの場所。生徒は立ち入り禁止なはずの屋上への階段を上る。すっかりお馴染みになったこの場所で、私はたまに授業をサボっていた。


「またサボるんですか、さん」
「だって、面倒でしょ?…べつに白馬君も一緒にサボることないのよ」
「いやいや、そんな遠慮しないでください。話し相手がいたほうが退屈しないでしょう」
「…さすが学年一位。サボるのくらい余裕ってわけね」
「それだけサボってて学年二位のあなたに言われたくないですね」


…私は、彼に引かれている。それは多分、口には出さないけど彼も一緒だろう。でも、心を許しちゃいけないんだ。彼は探偵…私は、たとえやっていることが正義でも、世の中から見ればただの悪人だ。…ハッキングという行為は、特定の人間だけに許されたものだ。通常は、法律に反するもの。


寝転がって見上げた空は、異常なほど青かった。









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