16.「君も同じ空を見ていますように」



と別れてから1年。お互い中学生になって、俺はテニス部で、は剣道部でそれぞれ頑張っている。


突然のことを思い出したのは、少し遠回りをして、あの並木道を歩いてきたから。


別に忘れていたわけじゃない。いつだってのことは頭の隅にある。…ただ、はあまり自分から連絡をくれない。俺も自分から連絡をするほうではないから、電話もメールも手紙も、回数は減る一方だ。お互いに自分の生活に精一杯といえばそうなのだが、そうやってを忘れていく気がして、…俺は、柄にもなく寂しさを感じていた。


こんな気分になると、俺はいつも、携帯を手に取る。…の電話番号を呼び出して、いつも通話ボタンだけを押せずにいる。…何もないけれど、話をしたい。でも、何もないのに話すなんて、迷惑じゃないのか?そう想うと、どうしてもボタンを押すだけのことが出来ない。筋肉が硬直したように動かない。


空は、こんなにも高く青く、澄んでいるのに。


俺は電話を持ったまま、部屋の窓を開けた。日中でも冷たいの風が、カーテンを揺らして部屋の中に入ってくる。…きっとが隣にいたなら、それだけのことでも喜んで、俺の隣で笑っていただろう。…そう考えたら、自然と笑えた。


この綺麗な空を、も見ているだろうか。もしそうなら、いいと思う。例えあえなくても心はつながっている、…そんな気がするから。


俺は、再び電話を見た。…何度も観て、覚えてしまったの番号。半ば勢いで、ボタンを押した。


呼び出し音が響く。俺の声をきいた瞬間、はどんな反応を示すだろうか。そう考えたら、心が安らいでいった。









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