……なんてこと、とてもいえるはずがなかった。
最近、先生の家にアフタヌーンティのお茶菓子を届けるのが習慣になっている。ちょうど私も春休みだし、ルークも暇だからと遊びに来てくれる。それに、アロマちゃんもいる。
…アロマちゃん。
とてもかわいい女の子。だけど、私にとっては恋敵。…わざわざ先生についてきたって言うから、相当すきなんだと思う。ただ、先生はアロマちゃんのことを好きとか、そういうわけではないらしい。それでも、アロマちゃんが先生を思う気持ちが本物だってことはわかる。…私は、アロマちゃんの真剣さに勝てるの?そんな変な迷いがあったら、どんどんアロマちゃんに「先生の隣」を取られてしまった。
切なくなって、それでも先生をあきらめられなくて、私はずるずるとここに通いつめている。そして、二人が仲良く話しているのをただ横目で見ている。そんな私にルークは心配そうな顔をするけれど、私はいつもそれに、大丈夫だよ、とうそを返した。
そして今日もまた、先生にお茶を淹れにきてくれといわれて、のこのことやってきた私。…ドアの前で足が固まって、それ以上踏み出すことができずにいる。いつもノックするまでにものすごく時間がかかってしまう。
弱いなぁ。
そう思っていると、いきなりドアが開いた。目の前に立っていた私のおでこに直撃して、痛みにその場に座り込む。すると真上から、先生の優しい声が聞こえた。
「…先生……」
「すまない、大丈夫かい?」
そういって手を差し出してくれる。さすが英国紳士。その手をとって立ち上がり、スカートのホコリをほろった。
「どうしたんですか、先生?どこか行くんですか?」
「いや、行かないよ」
「え?…だって」
「君がいつまでたっても入ってこないから、どうしたのかと思ってね」
「え… ど、どうしてわかるんですか?」
「足音だよ。静かだと聞こえるんだ」
一瞬テレパシー的なものを期待していた私は、先生の普通の答えに少し落胆を覚えた。けれど考えてみればそれは当たり前で、私が都合よく考えすぎなことは明確。だけど、私は先生の言葉にひとつ引っかかりを覚えた。
「…静か?」
「あぁ。それがどうかしたかい?」
「いえ、あの…今日は、アロマちゃんとかルークは…」
「今日はいないよ。呼ばなかったからね」
なるほど、だからか。なんて考えられるほど、私の頭は冷静じゃなかった。私だけ呼んでくれたの?そんな想いのほうが強くてうれしくなる。すると、先生は私の心を読んだように、くすっと笑っていった。
「その顔が見たかったんだよ」
ホントにわかりやすいんだからなぁ、と付け足して、私をソファに促してくれた。
…それは、期待してもいいんですか?私の都合のいいようにとっていいの?先生を見上げると、頷くように微笑んでくれる。
「今日は二人で、ゆっくりしよう」
そういって、先生は私の持っていたかごバッグを取り上げた。先生の入れてくれた紅茶のにおいが、ゆったりと室内に広がった。
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