21. 「いくらなんでも、そこまでバカじゃない」


(13の続き)





「―――さん…?」


久々に映画でも見ようと出かけた先で、彼に出会ってしまった。


「白馬くん…!?」


学校以外で彼に会うなんて、絶対無いと思っていたのに。


「どうしてここに…?」
「あなたこそ…」
「わ、私は…ただ映画を見にきただけで、…白馬くんは?」
「僕も、ですよ。…それも、多分同じ映画を」


そういって、差し出されたチケットをのぞきこめば、確かに私がこれから見ようとしている映画。しかも番号が…続いている?


「もしかして、隣?」
「え?」
「ほら…」


見せたチケットを見て、彼は本当に驚いていた。っていうか、驚いたのは私もなんだけど。


「ちょうどよいですね。 では、中に入りましょう。もうすぐ上映時間ですよ」


私の腕を引いて、彼が歩き出す。細くて長い…温かな指に、心臓が高鳴った。


「っ、白馬くん…」
「探」
「…え?」
「…探、って読んでください。そのほうが、デートみたいで楽しいですからね」
「な、なな、何をっ」
「僕も、って呼ぶから」


敬語がとれてるよ、この人…なんて、そんな細かいことにも反応してしまう。これじゃあ本当の恋人同士みたいじゃないか…?変に期待が膨らむ。


―――…でも。 私と彼は、決して一緒にいちゃいけないんだ。彼は、Mirrorを追うもの。行動を共にすることは、絶対にない。仲良くすることですらも、本当はいけないんだ。私の知能の低い頭でも、それくらいわかる。


目の前の彼…探は、いつになく楽しそうに笑っている。


…わかっている、心を許しちゃいけないことくらい。でも、私に彼を突き放すことができる?


「…どうぞご勝手に…探」









Love story 30 title
#21
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